『ラテン語初級講読A・B・D』 (担当:山下大吾)
ラテン語散文の鑑と言われ、ひいては英語を始めとする近代諸言語の散文や構文にも多大な影響を与え続けているキケローの諸作品。Aクラスでは、その代表的な弁論である「カティリーナ弾劾」に取り組んでおります。受講生は引き続きAさんとHさんのお二方です。前学期中に、カティリーナ当人を弁論の相手とした第一演説を読み終え、今学期は第二演説を読み進めています。
スタイルはローマ市民に対してキケローが語りかけるものに変わり、今もローマ市内に居座り続ける、カティリーナの残党に対する警戒の目を怠らぬよう繰り返し注意を喚起しています。7節では残党一味の具体的な内容について述べられていますが、「悪漢」に相当する言葉の列挙たるや凄まじく、殺し屋や詐欺師、盗賊を始めとして、その数は名詞だけで12、形容詞を入れれば14にも及びます。常日頃語彙の貧弱さに悩まされる身としては、これだけの芸当を目の当たりにすると何ともやりきれなくなるのが正直なところですが、目指すべき見事なexemplumに出会えたことを多としなければなりません。
Bクラス、並びに今学期途中から開講されたばかりのDクラスでは、哲学的対話篇の一つ『老年について』を読み進めております。受講生はそれぞれTさんとCさんのお一方ずつです。Bクラスでは全体の3分の1強に当たる34節まで進みました。授業では、老年における体力の持つ意味などその内容面のみならず、Tさんのご専門の関係から、現代ヨーロッパの言語の観点からラテン語の特徴を浮かび上がらせる言語的なテーマもしばしば話題になり、私も大変刺激を受けております。
(山下大吾)