「山びこ通信」2012/11月号より、ラテン語クラスの様子をお伝えします。(以下転載)
『ラテン語初級講読C 』(担当:前川裕)
このクラスでは、セネカ『ルキリウスヘの手紙(倫理書簡集)』を継続して読んでいます。今学期は第47書簡から読み進めています。受講生は引き続いて参加していただいているお二人で、1回当たりLoebのテキストで15行前後を宿題とし、単語調べや訳を準備いただいた上で、授業において順番に読んでいます。授業では訳読をしながら、基本的な文法事項を随時チェックし、基礎知識を確認しています。日本語訳やLoebの英語訳も時に参照しつつ、ラテン語原文と訳との相違点やその理由などを考えています。
セネカの書簡は実際の手紙ではなく、創作による文学作品と考えられていますが、その内容はたいへん面白いものです。今も昔も変わらない人間の性質を暴き出しています。第47書簡は奴隷についての話でした。これを読むと、当時の奴隷の扱い方がよく分かります。恐怖心によって強圧的に支配するのが一般的であったようです。しかしセネカはそのようなやり方に反対します。セネカによる「彼らは人間(homines)である」という言葉は、逆に主人たちが奴隷を人間として扱っていなかったことを表します。セネカはさらに「彼らの心は自由人かもしれない」と述べます。人間を人間として見なすこと、またその心において全ての人は自由であることを明示していることは、今の時代にも通じる内容だと強く感じます。
テキスト読解が終わったあと、余った時間ではおまけの話として、西洋古典に関する話題を提供しています。今期はギリシャ・ローマの書籍事情や、古代の教育について紹介をしました。
次学期も引き続きセネカの予定です。初級講読は、初級文法修了程度(独学でも構いません)でご参加でき、参加者に合わせた進度で進めます。興味を持たれた方はぜひごお問い合わせください。
(前川 裕)