今号の山びこ通信(2012/11月号)から、クラスの様子をご紹介します。(以下転載)
『ロシア語入門』 (担当:山下大吾)
今学期の当クラスでは、前学期に引き続き、ナウカ出版の井桁貞義著『名作に学ぶロシア語:初歩から講読へ』を用いてロシア語の文法を学んでおります。受講生は変わらずTさんお一方、ようやく過ごしやすくなった昼下がりの離れの間で、毎週楽しくも真剣な授業が行われております。
Tさんのご努力のおかけで、当初の計画より速いペースで学習課程が進んでおり、そろそろ教科書を一冊「あげる」段階になってきました。この教科書の例文で挙げられたテクストはそのままロシア文学の原典から採用されたものですので、これまで習ったものを繰り返すだけでも味わいのある経験を得られるものと思われますが、いよいよ本格的な講読の段階に入りつつあります。
教科書以外に私が参考資料として紹介する作品もあり、不定詞の無人称文の実用例として紹介したチュッチェフの詩を、Tさんはその異文の問題も押さえた上で暗記され、過日目の前で朗誦して下さいました。「ロシアをただひたすらに信じること」、この詩の持つ内容と迫力をそのまま体現されたかのような見事な朗誦でした。
今学期はこの先、教科書の巻末にあるプーシキンやレールモントフの抒情詩、ドストエフスキイやチェーホフの抜粋などに取り組むことになります。愛好する対象を共にする相手と、その原典を一緒に味読する。その素晴らしい時間を今か今かと待ち望んでおります。
(山下大吾)