『山の学校ゼミ(社会)』(クラスだより2012.11)

山びこ通信(2012/11月号)から、クラスの様子をご紹介します。(以下転載)『山の学校ゼミ(社会)』(担当:中島啓勝)

4月から新たに開講されたこの講座も、無事秋学期を迎えることとなりました。最初は「国際政治」を中心的なテーマにして受講者の皆さんと授業するなんてことが、果たしてできるのだろうかと我ながら半信半疑で開始したのですが、蓋を開けてみれば毎週とてもオープンで風通しの良い議論をすることができ、ホッと胸を撫で下ろしています。春学期はリアルタイムで起こっているニュースの解説に加え、東南アジアや中欧地域、アフガニスタンといった大国に翻弄されてきた地域の歴史や政治について学んできました。普段なかなか馴染みのない世界についての知識を深めたことで、受講者の皆さんも国際情勢を更に多面的に捉える機会を得たのではないかと自負しております。と言いつつ、僕自身も知らないことばかりで非常に勉強になったというのが偽らざる本音だったりしますが…。

それにしても今年は、ヨーロッパを中心に起こっている経済危機や各国の指導者交代劇、そして東アジアを揺るがす領土問題と、政治や経済に関する非常に重要なニュースが毎日のように伝えられてきました。そしてそのどれもがこの先どのように展開していくのか不透明な、極めて深刻な問題を提示しています。改めて痛感することは、これからの国際情勢を深く理解していくためにはもはや個々の専門的な知が現行の枠組みの中で再生産されることでは不充分だという事実です。専門家でさえも先を見通せないような事態が、それも複数同時に、複合的な形で進行するグローバル化の時代にあって、僕たちは何をどのように学び、日々の暮らしを守っていけば良いのでしょうか。

悩みは尽きませんが、現代ほど「ビッグ・ピクチャー」、つまり大まかな見立てが求められている時代もありません。社会の動きについて考えるということは、「偉い人」だけがやればいいことではありません。ほんの少しの勇気と好奇心と常識感覚さえ持っていれば、誰にでも参加できることです。自分たちの立場から見える景色を少しずつ拡張してみる。他の人の見ている景色がどのようなものか理解しようとしてみる。そして、乱暴な仮説でも構わないので、その混ざり合った景色に自分なりの額縁をあてがってみる。受講者の皆さんには国際情勢をただ知識として学ぶだけでなく、それを素材にしながら「より面白いものの見方はできないか」という野心的な意識を持ってもらいたいと思っていますし、僕も毎回皆さんの見ている素敵な景色を共有させてもらえて嬉しく思っています。

(中島啓勝)