イタリア語講読の様子を山びこ通信(2012/11月号)より転載いたします。
『イタリア語講読』 (担当:柱本元彦)
今学期も引きつづき三名で講座を進めています。今回は、このところ毎年のようにノーベル賞候補にあがりながら、半年ほど前にとつぜん亡くなったタブッキの作品、『黒い天使』のなかから最初の比較的長い短編を選んでみました。ひとつひとつのフレーズは難しくないのですが、独白の文章、いわゆる <意識の流れ> が綴られていて、視点や気分を変えながらうねうねとつづく文章は、いつまでたってもピリオドになりません。要するに、話者がどこで何に向かってどんな風に語っているのか、その語りかたを自分のなかで再現しながら読まなくては、わけが分からなくなってしまいます。舞台になっているピサの町を、ときどきは地図でたどりながら読むことも大切かもしれません。
ところで今回、「このテクストに決めました」とメールで受講生にお知らせしたのですが、おもしろいことに(いや実に情けないことに)、黒い天使、イタリア語で Angelo nero を Angero nero と書いてしまいました。日本人に R と L の区別は難しいとはいえ(馴染みの単語でなければわたしもまだ間違えます)、天使、アンジェロをしくじるとは、われながらあまりと言えばあまりにひどいはなしです。それで考えてみたのですが、パソコンのキーボード操作で、カタカナ読みを書くときに、ラリルレロはいつも R を使わなくてはなりません。だからきっとついうっかり!カタカナでもよく書くような単語の落とし穴! などと独りごち、似たような経験をした人はいないかと捜しはじめたところです。ともかく、こんな風に自己弁護して機械に責任をなすりつけたわけですから、この機会に長年使いつづけたノーマル・キー割り当てをはじめて変更し、la, li, lu, le, lo も ra, ri, ru, re, ro と同じく、ラリルレロに変わるようにしました。。。
(柱本元彦)