今号の山びこ通信(2011/2月号)から、クラスの様子をご紹介します。(以下転載)
『漢文入門』 (担当:村田澪)
昨夏から開講している漢文入門のクラスでは、西田太一郎『漢文法要説』を用いて漢文の基本的な語法を学びながら、比較的平易な散文や詩を読んでいます。
『漢文法要説』では、各文法事項に関して、古典文献から抜き出した豊富な用例があげられており、基礎的な構文を学ぶのに有益です。クラスでは受講者の皆さんに順に例文を訓読していただき、私から解説した後、質問にお答えするという形式をとっています。
講読に用いる文章としては、高校教科書に掲載されている訓点付きの短文から始め、その後は句読点のみのテキストを用いています。これまで、『旧唐書』という歴史書に載せられている杜甫と李白の伝記や、杜甫の五言律詩を読みました。伝記を読む際には、当時の社会状勢や地理が関連しますし、詩を読む場合には、詩のテーマ設定や全体の展開、個々の形容の特徴などを意識すると、より豊かな読解ができるようになります。例えば杜甫の「梅雨」という詩を読んだ時には、受講生の方から梅雨を詠った和歌との違いについてレジュメによる丁寧なご指摘があり、日中の文学表現の比較にまで話題が及びました。
漢文を学習する上で大切なのは「たくさん読む」ことです。それ以上に有効な方法は無いと言っても過言ではありません。できるだけ多くの文章に触れ、その経験を通して、語彙を増やし、漢文の持つリズムを体得し、一字一字が持つ本質的意味を帰納的に把握していくこと、各々の文章が持つ文脈のみならず、そこで使われている語句が時間軸上に持っている歴史的文脈をも理解すること、さらには、各文章が書かれた際の社会・思想・文化的背景を知っておくこと、これらができれば、どんな漢文でも自分で読みこなすことが可能でしょう。
しかしながら、いきなりたくさんの漢文を前にして読もうとしても、きっと途方に暮れることでしょう。このクラスではその前の準備段階として、漢文の基本的な構造に馴染んでいただけるようお手伝いすることを目標としています。
(村田澪)