高木です。
Hちゃんは、『借りぐらしのアリエッティ』という、
同名の映画に着想を得た物語を、書き上げてくれました。
彼女の第一作目です。
アリエッティは人間から物を借りて暮らしています。
しかしあるときアリエッティは、尋ねた人間の家で、猫に捕まってしまいます。
そこを助けてくれたのが、“やさ” という人間の男の子です。
しかしカリスという町には「人間に見られてはいけない」という掟があります。
急いで逃げ帰ったアリエッティはお母さんに、人間に見られたことを打ち明けます。
するとお母さん自身も、人間に見られたと言うではありませんか。それも “やさ” に!
アリエッティとお母さんは、連れ立ってやさの家へ行くことにしました。
しかし、アリエッティがやさと再会している間に、お母さんは、やさの世話係の “はるさん” に捕まってしまいます。
やさとアリエッティは、お母さんを助けるために、家中を冒険します。
アリエッティの存在やお母さんを助け出したことをはるさんに気付かれないように、二人は知恵をだしあいます。
そうしてお母さんは助かるのですが、町の掟をやぶってしまったことは確かです。
二人は引っ越すことになるのですが、最後にアリエッティはやさに「またどこかであいましょ」と言って、
「かばんの中からボタンをとり出しやさにあげました。」
Hちゃんは、原作の雰囲気をよくつかみながら、それを自分の物語へと発展させてくれています。
お母さん救出のための冒険の場面では、両面テープを手足に貼って壁をよじ登ったり、
高い窓の鍵を開けるために待ち針を使ってカーテンを登ったりと、
原作にある小道具をうまく利用するアイデアに溢れていました。
また、Hちゃんの物語は、ストーリーラインがしっかりしていました。
それぞれの場面が、因果関係できちんと結ばれています。
とくに、つかまったお母さんを助けにいくくだりには、ぐいぐいと引き込まれました。
さらに言えば、会話文も巧みでした。
「わたし、わたしの名前は、名前はアリエッティ…」
これは、アリエッティが初めてやさに出会ったときの言葉です。
緊張して、とぎれとぎれに話す様子が、うまく表現できていると思います。
今後の創作にたいするアドバイスとしては、こうしたしっかりとした筋立てをより活かすために、
服装や風景など、登場人物が目にしているものを描き込んでいくと良いのではないかと思いました。
それは、ストーリーそれ自体とは直接は関係してきませんが、
物語の世界観を構築するのに、とても有効な方法だと思います。
今のところ、原作の映画の映像や、自身が描く挿絵が、それに替わっているのだと思いますが、
それを言葉によって表現することで、より物語に深みが出ると思います。
こうしたことを踏まえて、次回作にも期待したいと思います。
Hちゃんは「次は、トトロでメイちゃんが見つかったあと、どんなふうにお話が続くかを書く!」と意欲満々です。
楽しみにしています!
また、Aちゃんも今日、
『女優になっちゃった!?』という物語を完成させてくれました。
私立高校に通う16歳の紅奈(クレナ)は、
ある日、親友の亜里沙(アリサ)と、女優オーディションを受けにいきます。
そこで見事合格したクレナは、CM出演にドラマの主役と、みるみる活躍します。
「女優になったのはいいんだけど、勉強する時間がない!」と、学業との両立に悩みながらも、
憧れの女優・清本春奈との共演も果たし、新人女優賞も受賞します。
最初に自分が雑誌に載ったとき、クレナは「あっ!」と大声を出して驚きます。
「お姉ちゃん?どうしたの?」と妹にきかれて、クレナは、
モデルになった「アリサがすごくかわいくのってたから、つい大きい声だしちゃって。」と答えます。
でも「本当は、アリサがのっていたんじゃなくて、私がでてたの!」
――嬉しいけど恥ずかしい、という微妙な心情がよく伝わってくるシーンだと思いました。
クレナはその後、怪我をした女優の代役で急遽、
ハリウッド映画『スパイ(SPY)』の主演に大抜擢され、アメリカへ渡ります。
その映画でクレナは認められ、ハリウッドスターに。
Aちゃんの作品は、紅奈の女優としての成長の日々を、とても豊かに描いています。
前作『PARIS Ballet Diary』もそうでしたが、Aちゃんの作品には、
将来の夢にたいする強い憧れがあふれていて、読ませてもらうと、すごく元気がでます。
Aちゃんはクレナに、初主演のドラマ『亜里奈と紅』について、こう語らせています。
「主人公はクレナ。
アリナとクレナが自分たちの夢に向かって、走り続ける話。
時には、すれちがいがあるけれど、
最後には、自分の将来の夢をかなえられる話。」
これはそのまま、Aちゃんの『女優になっちゃった』にも当てはまるのではないでしょうか。
夢に向かって、前向きに一歩一歩進んでいくストーリーは、あらゆる物語の王道だと言えます。
また、それを書く文章自体は、前作に比べてさらに巧くなっていました。
一番大きな前進は、主語の重複が無くなったことです。
構文が整理され、文章の流れも明快になりました。
やはり、日常的に創作に取り組んでいることと、日頃の読書量の多さが、
文章力を底上げしているのだと思います。
その上で、今後の物語作りへのコツを挙げるならば、
Aちゃんの作品の場合、主人公にとって悩ましく困難な場面を、どこかに描き出すことが、
物語により奥行をあたえるのではないかと思いました。
「起承転結」とよく言いますが、この「転」こそが、主人公の成長のきっかけをあたえ、
物語的にも、いわゆる「山場」となるのです。
困難な状況に立ち向かい、それを打開していく様子を、今よりも分厚く描写すると、
物語に一本の強い芯が生まれ、より読者の感情移入をさそう作品をつくることができるのではないでしょうか。
HちゃんとAちゃんの成長を、これからも支え、応援していきたいと思います。