百木です。
経済学入門の授業では、毎回その一週間の経済ニュースをチェック&解説しつつ、佐伯啓思『大転換 -脱成長社会へ』(2009年、NTT出版)を輪読しています。前回で第4章まで進みました。
簡単に第4章の内容を紹介します。
この章で著者は、「グローバライゼーション」と「グローバリズム」を区別して説明しています。グローバライゼーションがヒト、モノ、カネ、情報などが国境を超えて移動する「現象」であるのに対し、グローバリズムとは地球の一体化が望ましいことであり、人類の進歩を意味するという世界観・歴史観(イデオロギー)であると定義します。
かつて90年代の前半までは、グローバライゼーションが進み、地球が一体化すれば、国境の壁を超えて自由な交流が可能になり、平和で豊かな文明社会が訪れるという楽観的なユートピア(グローバリズム)が強い力をもっていたが、9.11テロ以降そのような幻想は崩れ去ったと著者は言います。むしろ現在は、グローバライゼーションが進んだゆえに、各国が改めて「国家」の意義を問い直し、「強い政府」どうしが争いあう状態(新しい帝国主義or新しい重商主義or新しい中世)になっているといいます。
たしかに最近はグローバル化について、肯定的な側面だけでなく否定的な側面も強調されるようになってきたように思います。しかし経済のグローバル化じたいは今後もいっそう進展するでしょうし、それ自体を批判してもどうしようもないという側面があることも確かです。このような状況において、我々はどのようにグローバル化の荒波と向き合っていくべきなのか。哲学的な議論も交えつつ、今後も深く本書を読み進めていければと考えています。