浅野です。
9月に開催された何でも勉強相談会の報告をさせていただきます。
今回は中2の生徒とそのお母さんから将来の進路や日々の学習について相談を受けました。他の方の参考になることもあるかと思いますので、ここにまとめておきます。
Q1:将来は小説の編集者になりたいと思っているのですが、そのためにはどのような進路に進むべきですか?
A1:現在ではやはり大学に進学するのが一般的でしょう。学部は文学部が王道でしょうが、得意分野を持って編集者というのもありなので、他の学部でもよいと思います。夢のない話をすると、編集者は人気の職業なので、いわゆる一流大学に行くことが近道にはなるでしょう。ただ、人脈を使って入り込んだりする道もあります。大事なことはいろいろなことに興味を持つことです。
Q2:高校は公立高校を考えているのですが、大学に進学するためにはⅡ類がよいでしょうか?また、どの高校がよいでしょうか?
A2:私は進路指導の専門家ではありませんし、京都出身でもないのではっきりとしたことは言えません。調べておきます。
(調べた結果)
やはり大学進学をはっきりと考えているならⅡ類のほうがよいでしょう。Ⅱ類ということであれば、京都市北通学圏の各校の中から選ぶことになります(ちなみにⅠ類だと個別の高校の受験をせずに通学圏全体での受験をして、その後で各高校に振り分けられます。これが各自が提出した希望に加えて、最寄のバス停によって高校が決められると噂されている有名なバス停方式ですね)。この時点で選択肢は限られます。各高校の特色や自宅からの距離などを考慮して決めるとよいです。以下の参考サイトもご参照ください。
<参考サイト>
・京都府教育委員会
京都府教育委員会が発行している平成21年度 京都府公立高等学校をめざすみなさんへ(PDF)が制度の概要を伝えています。
・京都府高校入試・受験情報サイト
京都府の高校入試についてわかりやすくまとめられています。家庭教師業者のサイトなので偏差値表などもあります。
・京都府高等学校一覧(Wikipedia)
タイトルの通りです。
・京都府京都市左京区周辺の地図から高校を探す|Benesse(ベネッセ)教育情報サイト
これもタイトルの通りですが、地図から高校を探すことができます。
~一般的な学習について~
Q3:実力テストはできるのですが、学校の定期テストがあまりできません。どうしたらよいでしょうか?
A3:それは悪くない傾向です。本当の実力がある証拠ですから。定期テストは学校で習ったことがそのまま出題されます。もしそこでよい結果を出したいなら、先生の言うことを注意深く聞いて、学校で用いた教材の復習を試験前にするとよいです。
Q4:家では勉強をせずに本ばかり読んでいます。これでよいのでしょうか?
A4:基本的にはそれでよいと言いたいです。学校の枠に縛られずにいろいろなことを学んでください。ただ、A1でお答えしましたように、将来の職業を考えると学校の勉強ができたほうが望ましいとは言えます。普段は本を読むのが基本でよいので、試験前に習った範囲を一通り復習するくらいのことをしてみてはいかがでしょうか。
Q5:本で読んだことと学校の勉強とがなかなかつながらないようです…。ノーベル賞を取られた益川先生がどこかで言っていたように、学問がおもしろくなるまでは相当な訓練が必要なのでしょうか?
A5:その通りだと思います。中学生の段階だと基礎の練習とおもしろさとの間には大きなギャップがあることが多いでしょう。しかし苦労がある分だけおもしろくなったときのおもしろさは大きいです。
Q6:本を読むのが好きといっても普段は目に付いた小説を読んでばかりいます。何かおすすめの本はありますか?
A6:興味に応じて本を読むのが一番なので、ここで具体的な書名を挙げることはしません。その代わりに、本の一般的な探し方をお伝えします。一番簡単なのは図書館で興味のあるテーマの棚をざっと見ることです。図書館によっては文庫や新書は別のところに置いてあることがあるので、そちらも見ましょう。特に文庫や新書の中には入門として最適な本が多いです。大きな位置取りをつかむためには、百科事典などの辞書類を読むのが有益です。そこで挙げられている参考文献は誰もが認める基本書であることが多いです。インターネットの検索ではwebcatplusが便利です。キーワードを入力するとおすすめの本を表示してくれます。このようにしてとっかかりをつかむと、あとは芋づる式に文献をたどることもできます。こうするとたくさんの本が読みたくなりますので、とても時間が足りません。そういうときは書評をチェックすると一つの判断材料を得られます。質は保証できませんが、インターネットで本のタイトルと「書評」や「レビュー」という言葉で検索すればいくらか見つかるはずです。
~各教科について~
Q7:本を読むのが好きな割には国語の成績がよくありません。どうしたらよいでしょうか?
A7:その場合はおそらく精密に読むということができていないのだと思われます。理由を聞かれたら「~だから」、どういうことかと聞かれたら「~ということ」のように答える必要があります。また、なぜ自分の答えではだめで模範解答なのかということを論理的に考えるくせをつけるべきです。文脈でアバウトに読むことばかりしていると国語の成績は頭打ちになります。どこかで精読する場を設けたいですね。
Q8:数学で計算間違いが多いです。間違えやすいパターンがあるのですが、なかなか直りません。どうすれば計算間違いを防げますか?
A8:間違えやすいパターンを認識しているならそのパターンに気をつけることです。あと、面倒でも途中式は丁寧めに書くと計算間違いは確実に減ります。きれいに途中式を書くことを心がけてください。
Q9:漢字や英単語を覚えるのが苦手なのですが、何かコツはありますか?好きな社会のことならいろいろと関連付けて苦もなく覚えられるのですが。
A9:漢字も英単語も関連付けられると覚えやすいです。漢字なら一般的に「へん」で意味を表し、「つくり」で音を表します。同様に英単語も語源的に分解するとその意味は自ずとわかります。しかし中学で習う英単語は小学校の低学年で習う漢字のようなもので、それ以上分解できないものがほとんどなので、覚え込んでしまうしかありません。発音しながら手を動かして書いて覚えるといった作業が必要です。漢字にしても、本を読んでいて自信がないなと思った語は積極的に辞書で確認すべきです。そうした積み重ねが大きな力になります。
~大人向けクラスについて~
Q10:今の職場には日本語はわからないけれども英語ならわかるという人がいます。その人とコミュニケーションを取りたいのですが、山の学校の英語クラス(一般対象)で対応できますでしょうか?今の英語力は中学卒業レベルです。
A10:対応可能です。現在の英語クラス(一般対象)は英会話のためのクラスではありませんが、英語の基本ということでは読解も会話も共通する部分が大きいです。流暢な会話ができなくても、実際の場面では意思疎通を図ることができます。
このような話を本人、保護者、私の3人で行った後で、本人から京都市の実力テストの答案を見せてもらいました。理科がよくないということで詳しく見てみると、ほとんどが問題の読み間違いや計算間違いの類でした。そこから推測すると、理解はできていても点数に結びつかないということが非常に多いのではないかと危惧されます。国語で求められる精密な読解も同じです。精密さを上げるためには、計算や漢字、英単語の地道な習得も大事です。
他の来てくれた人たちとも主に学習内容についてやり取りをしました。日頃の自習の延長といった様子でした。
次回の何でも勉強相談会は9月6日(月)の18:30~です。上記のような保護者からの相談も受け付けています。山の学校に関する問い合わせにもその場でわかる範囲でお応えし、必要に応じて担当者に取り次ぎいたします。その際は事前にご相談内容をお寄せいただけると助かります。
詳しく丁寧なレポートをありがとうございます。メモもされずに(ですね?)よくぞ、ここまでやりとりを再現してくださいました。
全体に目を通し、先生のお返事くださった内容に共感いたします。その上で、二つほど私から追加させていただきます。
Q1について:
「広く、深く!あらゆるジャンルに興味と関心を抱くこと。逆説的に、文学部以外を志望するくらいの迫力で理数系の勉強にも、政治や経済にも興味と理解を深めること。変なたとえを言えば、担当する小説家が原稿を締切りに間に合わさない場合、『自分が代わりに書いてでも穴を埋める!』という気概がもてるかどうか。それには作家以上に勉強する気持ちを持たないといけない。作家はあらゆるジャンルについて日々勉強しているので」。
Q2について:
まだ3年ではないので、志はどこまでも高くもってほしいと思います。ニ類、一類の進路相談は学校の成績をもとにして先生が適切なアドバイスをしてくださいます。「ニ類はだいじょうぶ」と言ってもらえるように、今目の前の勉強を真剣にとりくむことで、道は開かれるでしょう。
ここから先は本人に読ませたくない話・・・・(笑)。
大学に入ることから逆算すると、一類でもニ類でも、進学校でもそうでなくても、私は本人のやる気でどんな高校からでも志望校の合格は可能だと思っています。
ただ、そのためにも、「今」はベストを尽くす努力を繰り返して欲しいのです。進学先については、俗に言う「人事を尽くして天命を待つ」という気分で十分ではないでしょうか>保護者さま
むしろ、進学先の選択以上に大事なことを以下に述べます。
それは今まで数多くの受験生、かつ、大学生を見てきて思うことです。
ほとんどの場合、「自分で自分に『できない』言い訳をしてあきらめる」というパターンが多いです。非進学校の場合、「自分は非進学校だ、だからできない、無理だ」となります。
では進学校が有利なのか、と言えばそうとも限りません。進学校は進学校で、学校内で序列がつきます。一般高校だとじゅうぶん上位の成績がつく生徒なのに、進学校にまぎれこんだために、真ん中以下・・・というパターンはおおいにありうる話です。実際、上位の一握り以外は、「どうせ自分は・・・」と腐る可能性があります。そんなこんなで、へたをすると、自分で勝手に未来を見通した気になり努力を放棄するおそれがあります。
要は本人の気持ちの問題です。今の時代はこの手の「評価」が氾濫しているので、意図して耳を塞がない限り、集中を乱されます。とりわけ、保護者は(自分で勝負しないだけに靴の上から掻くような)焦る気持ちをたえずかきたてられるようになっています。
なんであれ勉強そのものが楽しいと感じているなら、周囲の評価にはさほど影響を受けなくてすむのです。成績がのびていくタイプとは、ほとんど例外なく「勉強を楽しめる」生徒です。ちなみに、勉強で「楽しむ」道とは、自分で自分を「いじめる」すべを心得ることです(甘やかす生徒が大半)。
スポーツで言えば、部員の全員がグラウンドから引き上げても、一人「よし、もう10周走ろう」と自分に言い聞かせ、一人で黙々とランニングすることが、勉強の「楽しさ」です。ちなみに、これは山の学校の生徒に言い聞かせているせりふなのですが、スポーツと勉強を比べると、勉強のほうがはるかに楽だと私は言いきかせています。
それはなぜか?
「グラウンドを走る場合、1周目より10周目がきつい。それにたいし、勉強の場合、問題集を1回目に手をつけるのと、10回繰り返すのとでは、10回目が圧倒的に『楽!』だから」です。(ためしにタイムを測れば、ランニングの10周目は1周目よりタイムが落ちますが、勉強の場合、1回目が一番時間がかかり、10回目は圧倒的に短い時間で最後までやり通せます)。
(※デカルトは自分の本は4回読みなおして欲しいと言いましたが、問題集の場合10回もやらなくても3~4回繰り返すだけで効果は絶大です)。
さて、受験を勝負事とみなすなら、誰もが自分の「評価」以上の進学先を目指します。(偏差値50の人は60あたりを、60の人は70あたりを・・・といったぐあいに)。であれば、模擬試験も含めた「評価」のほとんどはネガティブなものでしかありません。勝負の差がつくのは、その「評価」を本人がどう受け止め、どのような手を打つのかにかかっています。
つまり、「学校の名前」で勝負が決まるのではありません。
親としては、本人が「勉強が楽しい」と言う限り、とりたてて心配は無用です。そういう生徒はやるときに必ずやります。逆に、成績がいくらよくても「勉強がおもしろくない」と口にするなら、それは要注意です。
山の学校では「楽しく学べ」をモットーにしています。この方針は、今述べてきたように、受験を念頭においた場合(でも)、実に有効な戦略なのです。
そして、楽しく学ぶには、「基礎を大事にすること」です。山の学校では、学年を問わず、基礎の基礎を大事にしています。夏に行った私の「英語特講」でも、中2の生徒は中1の勉強を、中1の生徒は1学期の勉強を徹底的に復習したのは「英語が好きになる」ためです。
以上の話をまとめます。
科目を問わず、その勉強が「おもしろい!すきだ!」と言える生徒であれば何も心配することはない、ということです。
そして、この勉強に対するポジティブな気持は、どこの学校に行こうと行くまいと、心がけ次第で誰もが経験できることなのだ、という信念に基づいて私たち山の学校のスタッフ一同は日々力を合わせています。どうぞ、お任せください。
>メモもされずに(ですね?)よくぞ、ここまでやりとりを再現してくださいました。
メモを取っていなかったので、内容に応じて再構成しました。したがって当日の質問順序とは多少異なります。
>科目を問わず、その勉強が「おもしろい!すきだ!」と言える生徒であれば何も心配することはない、ということです。
やはりこれに尽きると思います。
詳細なコメントをしていただきありがとうございました。