浅野です。
英語読書会の第7回です。
一行があっけに取られていると、その男はさらにこう言います。
‘I’d not say no ter summat stronger if yeh’ve got it, mind.’
方言が多くて読みにくいです。”ter”は”to”、”summat”は”something”、”yeh”は”you”のようです。それでも文意がよくわかりません。方言の解釈が間違っているのかなといろいろな可能性を考えながら日本語を見ると次のようになっていました。
紅茶よりちょいと強い液体だってかまわんぞ。まあ、あればの話だがな。
最初は意味がわかりませんでしたが、この後でハグリッドが懐から琥珀色の液体が入ったビンを取り出して飲み始めたので意味がわかりました。そう、酒でもいいぞと言っていたのです(琥珀色の液体はウィスキーでしょうか)。”stronger”の後に”than tea”が省略されていたわけですね。
そんなやり取りをしている間にハグリッドはぱっと火をおこします。これも魔法の力なのでしょうか。ハリーはこのように感じます。
Harry felt the warmth wash over him as though he’d sunk into a hot bath.
“he’d”は”he would”か”he had”のどちらでしょうか。前者なら直後に動詞の原形、後者なら直後に動詞の過去分詞形が来ているはずです。そう、ここでは後者ですね。なぜ過去完了形になっているのかというと、”as though”(まるで~かのように)を受けて仮定法表現になっているからです。直訳を示しておきます。
ハリーはまるで暖かい風呂に入ったかのように暖かさが自分を包み込むのを感じた。
そしてハグリッドはソーセージなどを用意しながらハリーと会話するのですが、どうも話が通じません。どうやらダーズリー夫妻がハリーに伝えるべきことを伝えていないようです。ハグリッドは怒りに満ちてきます。
A braver man than Vernon Dursley would have quailed under the furious look Hagrid now gave him
ここでも”would have p.p.”と文脈に注意して仮定法表現だと意識すると内容をつかみやすいです。こちらも直訳を示しておきます。
ハグリッドが今投げかけている怒り狂った表情の下では、ヴァーノン・ダーズリーよりも勇敢な男でさえひるんだであろう。
事の真相をハリーに知らせるためには手紙を読むのに越したことはありません。
it’s abou’ time yeh read yer letter.
方言を標準英語に直しておきましょう。
it’s about time you read your letter.
いつも読書会時には順番に音読しているのですが、ここでの”read”は「リード」と読むべきか「レッド」と読むべきか判断できますでしょうか。Cさんが気づいてくれたように「レッド」と読むのが正解です。その理由は”it’s about time”が仮定法表現を伴うからです。意味も示しておきましょう。
そろそろお前は手紙を読むべき時間だ。
その手紙の冒頭は次の通りでした。
HOGWARTS SCHOOL OF WITHCRAFT AND WIZARDRY
Headmaster: Albus Dumbledore
(Order of Merlin, First Class, Grand Sorc., Chf. Warlock, Supreme Mugwump, International Confed. of Wizards)
魔法使い用語が多すぎて面食らいます。”witch”は女性の魔法使いで、”wizard”は男性の魔法使いのことです。女性形と男性形でこのように変化をする語は珍しいのではないでしょうか。少なくとも私は他に思いつきません。”witchcraft”と”wizardry”はそれぞれの人ではなく物の名詞形で、既存の日本語訳では「ホグワーツ魔法魔術学校」とされています。「魔法」を女性形に「魔術」を男性形に対応させているのは、基本的に性の区別をしない日本語に訳す際の苦肉の策でしょう。
ここまでは何とかついていけるとしても、担当のYさんが指摘してくれたように校長のダンブルドアの肩書きがえらいことになっています。魔法使いを表す語の微妙な違いは専門の辞書を見ないとわからないので、日本語訳だけを示しておきます。
ホグワーツ魔法魔術学校
校長 アルバス・ダンブルドア
マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員
その手紙の内容はというと、ハリーにこの学校へ入る準備を促すものでした。それにしてもハリーにとってわからないことだらけです。手始めに彼は手紙に書いてあったふくろうについて質問しました。
それを受けてハグリッドはこう言って、自分もふくろうで手紙を書かなければならなかったことを思い出します。
Gallopin’ Gorgons, that reminds me.
“Gallopin'(Galloping) Gorgons”は「おっとどっこい」といったような意味だとは文脈から推測できたのですが、その成り立ちがわかりませんでした。インターネットで調べた限りではハグリッドの造語のようです。直訳すると「駆け抜けるゴルゴン」です。ゴルゴンはギリシャ神話に登場するようです。
告知が遅くなりましたが、次回は5月7日(金)の18:40~です。
追記:ハグリッドのなまりという記事を発見しました。参考になります。
毎回充実したレポートをお書き頂き、有り難うございます。たいへんな労力だと思います。方言が多いと言うことで、なかなか大変そうですね(笑)。普段学校で学ぶ英語は、リライトされたものが多いので、面食らう場面もあるかと思います。英文はそういうもの、と割り切る気持ちでいくのがよいのでしょう。こういうのを読んでいると、学校の英語が楽に思える・・・はず!?
山下です。一つ前の投稿は私のものでした。名前を忘れて失礼しました。ラテン語ネタがあればまた教えてください。