0409 英語読書会

浅野です。

英語読書会の第6回です。

新年度になりましたがみなさまいかがお過ごしでしょうか。この英語読書会はこれからも基本的には隔週の金曜日18:40~、あるいは20:10~で開催する予定です。途中参加、途中復帰なども可能ですので、興味がある方はお問い合わせください。また、このブログ上で毎回の報告をなるべく詳しくするつもりですので、それに合わせて各自の空き時間に進めるもよしです。質問がございましたらコメント欄か山の学校までメールをください。

本の中でもちょうど学年の変わり目です。といってもそれは秋のことですが。日本で言うところの地元の公立中学校に入学しようとしていたハリーに手紙が届きます。しかしヴァーノンおじさんは何としてでもそれを阻止しようとします。

金曜日には12通の手紙が来たので、ついにヴァーノンおじさんはかなづちと釘でドアを閉じてしまいます。’Tip toe through the Tulips’という歌を歌いながら。Mさんが教えてくれたように、インターネット上で動画も見られます。確かに作業をするときに口ずさみたくなる曲です。

土曜日には24通の手紙が卵のパックに紛れて牛乳屋によって運び込まれました。どういう状況かいまいち想像できないなぁと話し合っていたら、Yさんが映画のシーンを思い出しました。卵の殻の中に手紙が隠されていたそうです。その後にヴァーノンおじさんは

Uncle Vernon made furious telephone calls to the post office and the dairy trying to find someone to complain to, …

という行動に出ました。怒って電話をしたのですが、どこに電話をしたのでしょうか。郵便局(the post office)と牛乳屋(the dairy)の両方です。”the dairy”と”trying”の間で大きく切れて、”trying”以下は分詞構文になっています。違う説明の仕方をすると、この文中の”and”は文と文とをつないでいるのではなく、語と語(the post officeとthe dairy)とをつないでいるわけです。参考までに直訳を示しておきます。

ヴァーノンおじさんは、その人に対して文句を言うべき誰かを見つけようとして、郵便局と牛乳屋に怒りの電話をして…

このような大事になると、さすがのダッドリー坊やも不思議に思います。

‘Who on earth wants to talk to you this badly?’ Dudley asked Harry in amazement.

Cさんが指摘してくれたように、この疑問文中の”on earth”は疑問を強めているだけなので「地球上で」と訳出する必要はありません。「一体全体」くらいに訳すことが多いです。そのときには言い忘れましたが、”badly”にも注目です。”~ly”となれば形容詞が副詞になるので、”badly”は「悪く」という意味かなと思われるはずです。もちろんその意味もありますが、「とても、ひどく」のように価値中立的に程度を強調する意味もあります。

日曜日には郵便配達がないだろうとヴァーノンおじさんは自分に言い聞かせますが、それほど甘くはありません。数十通の手紙が煙突から暖炉に投げ込まれます。手紙をつかもうとしたハリーは部屋から追い出されます。

When Aunt Petunia and Dudley had run out with their arms over their faces, Uncle Vernon slammed the door shut.

“with their arms over their faces”は以前にも出てきた付帯状況のwithです。これは”with+O+C”という形をしており、この文では”their arms”がOで”over their faces”がCです。直訳すると「自分たちの腕が顔を覆った状態で」となります。後半の文型を示すと、”Uncle Vernon”がS、”slammed”がV、”the door”がO、”shut”がCです。これも敢えて直訳するなら、「ヴァーノンおじさんはドアを閉じられた状態になるように閉めた」です。これらの「~O+C」の構造がつかめるようになると英語がぐっと読めるようになります。

時制についても一言触れておくと、”had”が用いられているのは、「ペチュニアとダッドリーが走って出て行った」のは「ヴァーノンおじさんがドアを閉めた」ときよりも前の出来事だからです。このように、ある過去の基準点より昔のことを表現するために過去完了形(had+p.p.)を用います。

次にヴァーノンおじさんはこう言います。

I want you all back here in five minutes, ready to leave.

まず”you all”の部分は同じ内容の名詞を二つ並べて同格にする用法です。”My friend Tom …”「私の友人のトムが…」という使い方です。”in five minutes”はつい「5分以内に」と訳したくなりますが、厳密に言うとそれは間違いです。正しくは「5分後に」です。「5分以内に」は”within five minutes”と表現します。最後に文型を示すと、”I”がS、”wnat”がV、”you all”がO、”back”がCと、これまたS+V+O+Cの文でした。”here”や”in five minutes”は副詞なので文型からは除外します。”ready to leave”の”ready”は形容詞なので、前の”back”と並列にしましょう。これらを踏まえて直訳すると

私はあなたたち全員が5分後にここに戻ってきて、出発する準備ができている状態であることを望む。

です。ちなみに出版されている日本語訳は

みんな、出発の準備をして五分後にここに集合だ。

です。さすがですね。

そうして一行は車で出発します。どうもヴァーノンおじさんの様子が変です。急に車を反対方向へと走らせたりします。

‘Shake ‘em off … shake ‘em off,’ he would mutter whenever he did this.

“‘em”というのは”them”の視覚方言です。そして手紙の送り主たちを指しています。最後の”this”はやや不明確ですが、直後にコロンなどでつながっていない限りは前のどこかの箇所を指しているはずなので、急に車を反対方向へと走らせることだと解釈しましょう。”whenever”は「~するといつも」、”would”は「~したものだった」という意味です。そうすると

「奴らを振り切るぞ、振り切るぞ…」と彼は方向転換をするたびごとにつぶやいたものであった。

となります。

そうしてたどり着いた郊外のみすぼらしいホテルでもハリー宛の手紙は届けられます。そうして一行はさらに移動を続けることになります。

ダッドリーはテレビ番組を基準にして曜日を把握しており、彼が言うにはそのときは月曜日だそうです。

Monday. This reminded Harry of something. If it was Monday — and you could usually count on Dudly to know the days of the week, because of television — then tomorrow, Tuesday, was Harry’s eleventh birthday. Of course, his birthdays were never exactly fun — last year, the Dursleys had given him a coat-hanger and a pair of Uncle Vernon’s old socks. Still, you weren’t eleven every day.

MさんはIfで始まる文の”you”に着目されていました。ここまででの文章で初めて”you”が登場したとのご指摘です。この部分を直訳するなら「もし月曜日で――そしてあなたが何曜日かを知るために普通ダッドリーを当てにすることができるのなら、…」となります。しかし日本語で「あなた」と強く訳出すると違和感が残ります。ここは「ダッドリーが普通あてになるのなら…」といった具合に主語をぼかすとよいでしょう。英語でははっきりと主語を示す必要があるので、”you”, “they”, “we”といった代名詞を一般人称として用います。

この月曜日の次の火曜日がハリーの誕生日のようです。もちろん普段から虐げられているハリーの誕生日が楽しいはずもありません。昨年はハンガーと古靴下をもらったようです(それでも誕生日が全く無視されるわけではなくて何かしらのものがプレゼントされるのはおもしろいですね)。上の引用の最後の部分、”still”で始まる文はどう捉えればよいでしょうか?まず”still”に着目しましょう。これは「まだ」という意味で使われることが多いですが、逆説の接続詞風に「それでも」といった意味で使われることもけっこうあります。とすればこの後は誕生日がよいという意味内容になるはずです。今度はbe動詞(weren’t)の部分に注目しましょう。be動詞は「~である」という状態動詞でそれほど強く意識しなくてもよい場合がほとんどですが、たまに「~になる」という動作動詞として使われることがあります。”you”は再び一般人称の使い方ですね。この三点に注意して訳すと、「それでも毎日11歳になるわけではない。」となります。出版されている日本語訳では「それでも、十一歳の誕生日は一生に一度しか来ない」とされていました。日本語らしいですね。

それで結局どこを目指していたのかというと、断崖絶壁のみじめな小屋でした。ハリーは床で寝ることを余儀なくされ、眠れないので自分の誕生日のカウントダウンを始めます。

…three — two — one —
BOOM.
The whole shack shivered and Harry sat bolt upright, staring at the door. Someone was outside, knocking to come in.

これがこの章の最後の部分です。”Harry sat bolt upright”がどういう状況なのかわからずみんなで苦しんでいたら、Yさんが「背筋をぴんと伸ばして座る」だと辞書で見つけました。やはりこうしたときは例文検索をかけてみるべきですね。この短い箇所には分詞構文が二回使われています。どちらも「~しながら」(「ドアをじっと見ながら」、「中に入ろうとノックしながら」)と受け取りましょうか。それとも単に「~して」(「ドアをじっと見て」、「中に入ろうとノックをして」)と”and”を補っても間違いではないでしょう。

今回はここまででした。誰が立っていたのかは次回のお楽しみです。

英語で読むと時間がかかるので、日本語で読んでいたら読み飛ばしていたであろう細部に気を配ることができます。今回も「なぜ手紙をわざわざ卵の中に入れるのか、そんなことができるくらいならこっそりハリーに渡せるのではないか」、「小屋へ向かう途中でヴァーノンおじさんが買ったものは何だったのか」といった疑問が出されました。先を読んでこれらの疑問を解決できなかったとしても、細部に意識を向けると話を読んだときの印象が深くなるように感じます。

次回の日時が決まりましたらコメント欄に書き込みます。