0325 英語読書会

浅野です。

英語読書会の第5回です。今回は参加者が少なく寂しかったのですが、家の中で虐げられるハリーの寂しさとは比べようもありません。

動物園の一件のせいで長く物置(cupboard)に閉じ込められることになり、ようやくそこから出ることを許されても、ダッドリーとその友人たちが来る日も来る日もハリーをいじめにやって来ます。「来る日も来る日も」の原語は”every single day”で、当日は手持ちの辞書でそのままの形を見つけることができませんでしたが、英辞郎には出てきました。”every day”を強めているという理解でよかったようです。

ダッドリーが新しく通う学校の制服を着た姿を見て、彼の両親は口々に誉めそやします。一方ハリーはこう思っていました。

He thought two of his ribs might already have cracked from trying not to laugh.

この”might already have cracked”の部分の時制がわかりづらいです。推量(可能性)の助動詞は”may”も”might”も現在のことについて「~かもしれない」と推量するときに用います。強いて違いを言うなら”might”のほうが可能性を低く見積もっていることです。それでは「~だったかもしれない」と過去を推量するためにはどう表現したらよいのでしょうか。”may have p.p.”あるいは”might have p.p.”です。まとめると、推量の助動詞は”have”の有無で過去か現在かを判断します。

さらにややこしいことに、この引用文では”thought”節の中で使われているために時制の一致を受けます。Cさんは慧眼にも「この文を直接話法にするとどうなりますか?」と質問してくれました。おそらく”He thought “Two of my ribs may already have cracked from trying not to laugh.””でしょう。もしかすると”may”のところは”might”かもしれません。どちらにせよ、このことを思ったときより過去のことを推量していることになります。ということで直訳すると

彼は笑わないようにしたために2つの肋骨が割れてしまったかもしれないと思った。

となります。

ある日そんなハリーに宛てられた手紙が来ます。ハリーはまさか自分宛に手紙が来るなどとは思ってもいませんでした。しかし宛名には次のように書かれていたのです。

Mr H. Potter
The Cupboard under the Stairs
4 Privet Drive
Little Whinging
Surrey

「階段下の物置」とはっきり書いてあるのでハリー宛で間違いありません。

…addressed so plainly there could be no mistake

…それほどはっきりと宛先が書かれていたので、間違いがあるはずもない

ここでも推量の助動詞が登場します。”could”ですが、”no”があるので事実上は”couldn’t”です。「~のはずがない」という意味ですね。”have”がないので「~のはずがなかった」と過去の推量で訳してはいけません。全体はso ~ that …構文です。”there”の直前に”that”が省略されています。

この宛先の書き方で少し注意すべき点は英語では一般に狭い順で住所を書くことです。日本式の書き方に慣れた私たちには大きい順のほうが合理的であるように思いますが。「プリベット通り4番地」はよいとして、”Little Whinging”にCさんは着目していました。固有名詞として「リトルウィンジング」としてもよいのですが、”whinge”という動詞には「泣き言をいう」という意味があるので地名にしては変ではないかと。少し調べてみるとどうやら”Little Whinging”は架空の町の名前で、ちょっとした皮肉表現になっているようです。敢えて日本風にするなら「小泣町」といったところで、ダッドリーへの当て付けだと考えることができます(参考:Places in Harry Potter(Wikipedia))。ちなみに”Surrey”はイングランドに実在する地名です。

その手紙はこのような様子でした。

Harry saw a purple wax seal bearing a coat of arms; a lion, an eagle, a badger and a snake surrounding a large letter ‘H’.

まずは単語や熟語から片付けましょう。”wax seal”は「蝋の封印」です。”bear”にはたくさんの意味がありますが、中核にあるのは「持つ」という意味です。そこから「(お腹の中に胎児を持って)産む」や「耐える(持ちこたえる)」といった意味合いも出てきます。”coat of arms”は「(羽織に描かれていたような)紋章」で、”badger”は「アナグマ」です。”letter”はここでは「手紙」ではなく「文字」ですね。次に記号に注目しましょう。「;(セミコロン)」は「:(コロン)」と「,(コンマ)」との中間です。「:(コロン)」はしばしば「つまり」といった具合に、何かを後から詳しく説明するときに使われます。ここでの「;(セミコロン)」はこの「:(コロン)」の用法に近いですね。これらを踏まえて訳してみると

ハリーは紋章を有する蝋の封印を見た。その紋章はライオン、ワシ、アナグマ、ヘビが大きな「H」という文字を取り囲んでいるものだった。

となります。つまりこれですね。

hogwartscrest

結局この日手紙はヴァーノンおじさんに取り上げられるのですが、次の日も、また次の日も執拗に手紙が届けられます。ハリーが寝床を二階の部屋に移すと宛先もそれに応じて変わっています。そうこうしてヴァーノンおじさんがだんだんおかしくなってきたところで今回はおしまいになりました。

次回の日程は未定です。決まり次第コメント欄に書くようにします。