0312 英語読書会

浅野です。

英語読書会の第4回です。約一ヶ月ぶりの会でしたが、今回も密度が濃かったです。

第2章も後半に差し掛かると、ハリーが人間界で示す魔法使いの片鱗もいよいよあからさまになってきます。ほとんど坊主頭にされた髪の毛が一夜にして元通りになったり、学校でいじめっ子たちから逃げているうちに気づいたら屋根の上にいたりという事件がありました。

ダーズリー夫妻はそうした魔法使いの力を恐れてか、ハリーが不思議なことを言うのを禁止します。ヴァーノンが道行くバイクに文句を言ったことをきっかけに、ハリーが夢でバイクが空を飛んでいたと言っただけでも大いに怒られます。その出来事のあとに次のような一文がありました。

he wished he hadn’t said anything.

“wish”はその後に節を取る場合は必ず仮定法表現になります。仮定法表現では時制が一つ下がるので、この文の意味は「彼は何も言わなければよかったのにと思った(でも実際には何かを言ってしまった)」ということになります。この”he”が誰を指すかで迷いました。同じ文中での”he”は基本的に同一人物です。読書会の場ではヴァーノンおじさんかなという話しに落ち着きましたが、ハリーを指しているようにも思えます。

それでも動物園でのお昼ご飯までは平穏です。

Harry was allowed to finish the first.

とあるように、ハリーは何かを許可されたくらいですから。それでは何を許可されたのでしょうか。お昼ごはんを最初に食べ終えることか、最初のもの(パフェ)を食べ切ることでしょうか。ここでは”the first”には”the”がついているので名詞、つまり「最初のもの」となります。”finish”は他動詞で用いられることがほとんどですので、その点とも符合します。「ハリーは最初のもの(パフェ)を食べ終えることを許された」ということですね。

ところがそんなによいことばかりではありません。

Harry felt, afterwards, that he should have known it was all too good to last.

です。この文の後半はいわゆるtoo ~ to …構文で「あまりに~なので…できない」という意味です。…の部分には動詞が入るので、この”last”は「続く」という意味の動詞です。その部分だけを直訳すると、「それはあまりに良すぎて続くことはできなかった」となります。文の中盤の”should have known”は「知るべきだったのに(実際は知らなかった)」と過去を後悔するような表現です。ということで全体をつなげると「その後、ハリーは、その状況はずっと続くにはあまりに良すぎたということをわかっておくべきだったと感じた」です。相変わらず下手な訳ですみません。

昼食後には爬虫類館へと行くことになります。その館は

with lit windows all along the walls

の状態です。この箇所は難しいですね。謎解きをする前に、その少し後の描写を見てみましょう。

Dudly stood with his nose pressed against the glass.

この文の”with”はいわゆる付帯状況のwithで、”with O C”という構造になっているので「OがCの状態で」という内容を示しています。ここでは「自分の鼻がガラスに押し当てられた状態で」ということです。自然な日本語にするなら「ダッドリーは鼻をガラスに押しつけて立っていた」といったところでしょう。

同じ構造を先の部分に当てはめますと、「”lit windows”がすべて”along the walls”の状態で」となります。”lit”は「灯をつける」という動詞である”light”の過去分詞形です。直訳すると「点灯された窓が壁に沿った状態で」となります。ちなみにここの部分の出版されている日本語訳は「壁に沿ってガラスケースが並び、中には照明がついていた」と大幅に意訳されています。

大きな出来事がこの爬虫類館で起こります。何とヘビのまわりのガラスが消えてしまうのです。そうして解放されたヘビはハリーに向かって一言。

Thanksss, amigo.

これが日本語版では「シュシュシュ、ありがとよ。アミーゴ。」と訳されています。元の英語では”thanks”の最後の”s”と、ヘビが出す「シュシュシュ」という音がうまく合わさっているのですが、それを日本語で再現することは極めて困難です。こうした音に関する部分は原文ならではの味わいです。

そんな出来事があったものですから、ハリーは帰ってから大いに怒られます。ハリーは気の毒です。しかし、2章を担当していただいたMさんもが指摘されたように、そうした苦難を経験することが立派な魔法使いになるための最大の素質を養っていたのかもしれません。こうしたことも含めて、『ハリー・ポッター』は古典的な作品であると私は感じました。

時間が少し余っていたので第3章にも少しだけ入りました。この章を担当してくれるCさんはまず”The Letters from No One”というタイトルに着目していました。「知らない人からの手紙」か「誰からでもない手紙」のどちらなのかという問題提起です。個人的には後者かなと思うのですが、日本語版では前者が採用されています。もっともどちらにしてもそれほど大きな違いはありません。

2章からの流れでハリーとダッドリーとのやり取りが描かれています。ダッドリーがハリーに悪口を言うと、ハリーはそれに知的に応対し、

Then he ran before Dudley could work out what he’d said.

となります。ここでYさんから”work out”とはどういう意味ですかと質問されました。いや、もうその質問の仕方である時点でわかったようなものです。”work out”で一つの熟語表現だろうと推測できているのですから。辞書で確認してもらうとすぐに”work out”してくれました。そう、「気づく」といった意味です。

彼らもいよいよ中学校に進学するということで、ダッドリーは名門のSmeltings校へ、ハリーは”local comprehensive”へとそれぞれ進学するようです。”local comprehensive”とはどうも日本でいうなら地元の公立中学校に相当するようです。

このあたりで今回は時間となりました。