福西です。
ロボット工作の授業の予定です。
授業で扱う『ロボット』は、簡単に言えば、「モーター(手足)」、「センサー(感覚器官)」、「制御基板(脳)」の三つの要素をつないだものを指します。これらの要素を一つずつ勉強することで、より精度の高いロボットを作ることができます。
(他の細かな要素としては、タッピングボード(胴体)、電池ボックス(心臓)、ネジ(関節)、配線(神経)などがあります。そしてロボットは、これらの要素をすべて使って、ある目的(設計仕様=パフォーマンス)を達成するために組み立てられます)。
(タミヤから出ているリモコン用ロボットキット。授業では自動制御できるミュウロボを使います(外見はほとんど一緒です))
(ギアボックス。中にモーターが入っています)
モーター(ギアボックス)に、アームやタイヤを取り付けると、すぐさまそれがロボットの手足となります。物をつかむ、運ぶ、速く走る、障害物を乗り越えるなど、ロボットにどういう作業をさせたいか、その目的によってさまざまな形を考えることができます(クレーン、バケット、マジックハンド、車、クローラー(キャタピラ)など)。タイヤを2つにするか、4つにするか、それともキャタピラにするかということや、アームを長くするか、短くするか、関節をいくつにするかなど、一番具体的で大胆なアイデアを必要とするのが、このモーター回りです。ある程度の設計をもとに組み立てたそれが、電源を入れたときに、果たしてどんな動きをするのか実際に作って確かめてください。そこでまた「リンク機構」というものを勉強すれば、より望みの作業をロボットにさせることができるでしょう。
ロボットアームあれこれ。
またセンサーには、リミットスイッチや触覚センサーなどの「接触センサー」をはじめ、「赤外線センサー」(これでライントレースができます)、距離センサー(壁感知)、傾斜センサー(転倒感知)、振動センサー、速度センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー(回転)、温度センサー、音センサー、光センサーなど、実にさまざまなものがあります。これを取り付けることで、ロボットは様々なことを「感じる」ことができるようになります。
(CdS光センサー)
そしてやはり何と言っても最も大切な要素は、制御基板(脳)です。そしてこの脳に規範(時と場合に応じて何をどうすればよいか)を覚えさせるのが「プログラム」です。制御基板はこのプログラムがなければ何も働きません。またプログラムをかくのは、パソコンの画面上での作業になります。ロボットの重量、電池の出力、モーターのパワー、取り付け可能なセンサーの数には、物理的な限界があるため、それでもロボットの性能を上げるためには、プログラムを複雑にする必要があります。(逆にプログラムが簡単だと、それだけ多くの材料を取り付けて物理的にカバーしなければなりません)。
(ミュウロボの制御基板)
今年度の前半は、「モーター」と「センサー」について理解を深めます。モーターは、まだ自立制御ではなくリモコン操作でその動きを確かめます。またセンサーは、ブレッドボードという回路を簡単に形成できるものを使って考えます。
ブレッドボード(パンに似ていることからこの名前)
モーターとセンサーについて理解の下地ができたら、いよいよロボットに頭脳を取り付けます。今度はリモコン操作ではなく、自立制御(自分で考えて動くこと)を新たな目的とします。
(ミュウロボ・プログラム用のフリーソフト”MYU BASIC”)
ロボットに必要なプログラムは、他の様々なプログラムと違って、割と単純です。「センサー(感覚)で取り入れた情報を、On/Offのスイッチ代わりにして、各モーター(手足)を駆動すること」だけを考えればいいのです。それでも、パソコンの画面にはエラーが何度も現れ、また完成したプログラムで実際に動かしてみるとロボットが思い通りに動いてくれないことがほとんどです。試行錯誤と根気が必要です。しかし、目的を達成しようという熱意がある限り、必ず道は開けます。言い換えれば、その時の試行錯誤が長ければ長いほど、人よりも多くの経験を積むことができます。
プログラムの一例
//触覚センサーを使った迷路脱出。左右あるいは正面の壁を感知して方向転換するプログラム
DEFINE UT, 後退 10 右回り 27 前進 5 //Uターンの定義
前進 10
do
前進
if in(2)=0 then
前進5 //両方の触覚センサーに当てるため
if in(3)=0 then
UT //正面の壁にぶつかったらUターン
else
後退 5
右回り 5 //左の壁にぶつかったから右によける
endif
elseif in(3)=0 then
前進 5
if in(2)=0 then
UT
else
後退 5
左回り 5 //右の壁にぶつかったから左によける
endif
endif
Loop
ぜひともハード・ソフト両面で自作のロボットが進化していく過程を、「自身の進化」とともに楽しみましょう!
*以下はあくまで予定です。ご参考まで。
<春学期>
・色々なロボットの例の紹介。宿題「ロボットのイメージを図にかこう」
・ミュウロボベースセットの説明。リモコンを組み立てよう。
・モーターその1(タイヤ)、移動・旋回のしくみを理解しよう。
・モーターその2(アーム)、リンク機構の勉強。
・モーターその3(アーム)。色々な形のアームを作って、リモコンで動かして遊ぼう。
・頭脳を取り付けよう(制御基板630)。簡単なプログラム「迷路脱出ロボット」(リミットスイッチ1個)
・夏休みの課題「リミットスイッチ2個使って、迷路脱出ロボットを改良しよう」
<秋学期>
・センサーその1(接触センサー)、触覚センサーで「迷路脱出ロボット」を改良しよう。
・センサーその2「ブレッドボード」を使おう。
・センサーその3(LED)
・センサーその4(CdS光センサー)
・センサーその5(赤外線センサー)
・センサーその6(距離センサー)
・ミュウロボにブレッドボードを取り付けてパワーアップしよう。
・冬休みの課題
「タイヤをベルト式に換装し、障害物を走破(あるいは感知して方向転換)するロボットを製作しよう」
<冬学期>(プログラムと並行)
・プログラムソフト「MY BASIC」を触ろう。パソコンからリモートコントロールして遊ぼう。
・自分で迷路脱出プログラムをかこう。
・ミュウロボの制御基板を630から688にパワーアップ。
・ライントレースのプログラムをかこう。
・ライントレースのロボット製作。
・ミュウロボの2モーターをドライバーで3モーターにパワーアップ。
・立っている空き缶をつかんで移動させるロボットの製作。
・春休みの課題
以下の中から一つ選択して製作。
・寝ている空き缶を立て直してから移動させるロボット。
・明るさでスピードを変えるロボット。
・暗い場所(車庫)で停止するロボット。
・転倒してもひっくり返るロボット。
・ライントレースロボットの改良。
以上です。
ロボット工作のお手本のページはこちら。
スタジオミュウ
独自に材料調達をしたい方はこちら。
マルツパーツ
いよいよですね。充実した取り組みになりますよう。
>ロボット工作のお手本のページはこちら。
リンクの設定をお願いいたします(^^)
>リンクの設定をお願いいたします(^^)
あ、失礼しました(笑)
リンクを貼りなおしました。
授業は中学生が対象ですが、小学生の生徒さんでも「作りたい!」というお子さんがきっといるかと思います。その場合、お父さんと一緒なら「ミュウロボの組み立て」は1~2時間ぐらいでできると思います。ご興味のある方は、ぜひスタジオミュウのHPを覗いてみて下さい(^^)
また、ミュウロボのほかにもロボット工作キットで同じ型のものが何種類かあります。マルツパーツのHPをのぞくと、他の工作キットでお手ごろなものが見つかるかもしれません。(また低学年向けのものとして、昆虫型ロボットなど1000円ぐらいで手に入ります。ただしこれは自動制御ではなくて、リモコン操作なのですぐに飽きてしまうと思われます)
<小学生のお子さんをお持ちの方へ>
ミュウロボは基本セットで約3000円ぐらいですが、これが高いか安いかは人によって変わってきますので、購入の際にはくれぐれもご検討ください。よっぽど興味がない場合には、おそらく高い買い物になってしまうだろうと思います。
ちなみに他の企業から出ている同程度の性能のロボットですと、6000円~1万円が相場です。ロボットにもピンからきりまであって、二足歩行のロボットでは、サーボモーター(これが5千円ぐらい…う~ん、高い!)を10個から20個ほど使うので、普通に5千円×10個(~20個)=5万円(~10万円!)というのが相場です。
その値段帯から考えれば、ミュウロボは(普通のモーターで駆動するので、できることも限られますが)、何と言っても初心者にはお手ごろです。基板だけで2500円ぐらいする(値段のほとんど)ところに、必要な部品が全部ついてきて一台完成できるので、良心的というのが今の私の感覚です。ただしあとあとセンサーを取り付けたりして拡張していくと、やっぱり5000円はすぐに覚悟しなければなりません。どうぞご参考までに。
私は亮馬先生のデモンストレーションをちょっと拝見しただけなのですが、プログラムを組んで頭脳?を鍛えることができる点に大いなる魅力を感じました。ロボットが自立走行できるように「しつける」感覚は、不謹慎にも「子育て」を連想してしまいました。