山の学校設立1年目の「山びこ通信」第3号(2003年11月)からの記事です。(以下転載)
*** SENSE OF WONDER !
『しぜん』だより (担当:山下育子/山下太郎)
2学期のしぜんクラスは、8月26日「山の学校」夏のイベント “ワクワク探険教室” でスタートしました。
“きのこ”をテーマに、また、鳥の声に耳を傾けながら瓜生山中を歩き、“カワラタケ、ベニタケ、シロハツ、ホウキタケ、ドクヤマドリ、それに珍しいツチグリ”など、沢山のきのこを見つけることができました。それを、予め大まかに分類しておいた5、6枚の「きのこカード」に照らし合わせながら該当のカードの下にきのこを1つずつ置いていき、狸谷不動院の軒をお借りして、『きのこ実物分類表』が出来上がりました。雨上がりの暑い夏の一日が、今ではとても懐かしく思い出されます。
“ひまわりの種”──ある9月のクラス
この夏は、大きな「ひまわり」の花が何十本と、空高く花壇一面に咲きました。この日のクラスでは、まずはじめに、5月にひまわりの種を皆で植えたことを思い出してみました。
- 春の花の残り(チューリップ、ムスカリ、クロッカス)を1本ずつ土から抜く
- 根のまわりに、子球ができているのを観察する
- 雑草を抜き、土を耕して、新しい土と肥料を加え、ふかふかの土にする
- 4種類のひまわり(ジャンボリー、サンスポット、かがやき、サンビーム)を、指で穴を開けてその中に1粒ずつ種を入れ、土をかぶせる
- たっぷりの水をかける
「ぼくは、ムスカリ好きだったな」「ひまわりはあっという間に、ぐんぐん大きくなっていったね」
「ひまわり」とは、日を追って回る花という意味があるそうで、花が咲いたらもう回らなくなります。また、ひまわりは北アメリカの野原で生まれてヨーロッパに広まり、17世紀頃中国を通って日本に来たそうです。
──クラスの机の上には、咲き残った小さなひまわりの花がガラス瓶に、そして傍らに高さ2メートルはあり、大きな顔を下に向けたひまわりが首を垂れてクラスの仲間入りをしています。
「ひまわりの種って食べられるって聞いたよ」
「テレビで、大リーガーがベンチでプップッって口から殻を出してるの見たことない?」
「リスはほっぺたにいっぱいためている」
「殻は食べられないね」
「ひまわりの種はたんぱく質、マグネシウム、カルシウム、鉄分などの栄養がいっぱいあるそうよ」
──皆の顔は、ニンマリ「ひまわりの種のおやつ?」ムード・・・。クラスの隅には、コンロとフライパンが見えているので勘のいいみんなは初めからわかっていたようでした。
「じゃ、殻をむいてみよう」「殻をむかないで、そのままフライパンに入れてみようかな」
──結構、殻を一つずつむく作業は大変でしたが、フライパンで炒った“ひまわり”の味は、皆、口を揃えて「美味しい!」
「アーモンドみたいな味!」
*一人何粒かの貴重なおやつに、りんごジュースが加わり楽しいひと時となりました。
“誰の声かな?” 虫の音──ある9月のクラス
皆がよく知っている、夏に木の上で鳴く虫は? 「セミ!」
では、今のこの時期によく鳴いている虫は何だろう?
「コオロギ」
「スズムシ」
「マツムシ」
・・・「バッタ!」
「バッタは鳴くかな?」
バッタの仲間には、足を体にこすり合わせて音を出すのもいるけど、「鳴く虫」とは違うね。
「バッタの仲間は何がいる?」
「トノサマバッタ」
「ヒシバッタ」
「オンブバッタ」
「イナゴ」
「秋になると、あちこちからいろんな虫の音が聞こえてくるね」
「オスがメスを誘うんだね」
「メスは鳴かないね」
鳴き声を出す虫は、キリギリス、コオロギの仲間です。このお山でもよく耳を澄ますとお昼から、そして夜は勿論、虫たちの大合唱が聞こえます。
コオロギの仲間 ・・・
- 体の特長は、背が低く横幅が広い
- 住んでいる場所は、地面や草の上
エンマコオロギ 『コロコロコロコロリー』
カネタタキ 『チンチンチンチン』
アオマツムシ 『リーッ、リーッ』
ツヅレサセコオロギ 『リィリィリィリィ』
カンタン 『ルルルルル』
キリギリスの仲間 ・・・
- 体の特長は、背が高く横幅が狭い
- 住んでいる場所は、草の上
キリギリス 『ギーッチョン、ギーッチョン』
ウマオイ 『スィーッチョン、スィーッチョン』
*鳴く虫の種類と鳴き声を、スクリーンを使って見ました。また、このお山で鳴いている、夜の虫の合唱の録音を、静かに耳を澄まして聞いてみました。最後に、皆の知っている「虫の声」の歌を一緒に歌いました。
──あれマツムシが鳴いている ちんちろちんちろちんちろりん あれスズムシも鳴きだした リンリンリンリン リーンリン……
“ミ・ミ・ズ” 雨の一日──ある10月のクラス
この日は雨でした。外国では「アースワーム」、つまり「地球の虫」と言われるミミズについて、みんなで考えてみました。
ミミズは、世界で約3、600種類、長いミミズは2メートル、短いミミズで5ミリ。私たちが身近によく見るのは雨あがりに道でみかける、長さ12~15センチくらいの“フトミミズ”、土や枯れた根を食べます。また、“シマミミズ”は、5~8センチ、赤っぽく体にしまがあり、生ゴミを食べてくれます。
ミミズたちのお腹を通って出てきたふんは、すぐれた「土」であること、また、そのミミズの自然の力を利用して産業廃棄物や一般家庭の生ゴミまで肥料化できる、ミミズのすごい活躍に思いを馳せました。
後半は、ビデオシアターで、植物の種についての“胞子のファンタジア”を鑑賞しました。小学生たちは食い入るようにスクリーンを見つめますが、どこからか私語が聞こえてくると、しっかりした上級生から「静かに!」と注意をされることもあります。しぜんクラスは子どもたち自身の協力体制で、クラスが成り立っていると感じます。また、何かに対しての質問が出ると、クラスのメンバーの誰からか、それに対する答えが返ってきます。まるで、インターネットのようなクラスだと思うほどです。
「生物」「植物」などの自然分野が大好きな子どもたちだけあって、驚くほどの好奇心と知識に満ちていて、感心することたびたびです。
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そして、映画が終わるやいなや、ある小学生が観賞後の印象を心に感じたままプリントの端っこを使って表現してくれました。この場をかりて、ご紹介いたします。
詩
星の空で つくしのほうしが 踊ってた
ブルーのからだで たいそうだ
水の上を すいすいと
仲間といっしょに おいわいだ
ぼくらの誕生 おいわいだ
(山下育子)