◇◇◇「講評会」と「かいが自由制作の会」(3/14)◇◇◇
梅の香りと、春の陽光に包まれたこの日、初の試みとなる「かいが自由制作の会」を無事に終えることができました。対象は「小学生(山の学校会員に限らず)」でしたが、19名ものご参加をいただき、大変賑わいのある会となりました。
時を忘れて、心ゆくまで描こう。をテーマに据えたこのイベントでは、描き終える時間を参加者が自由に決めることができます。最も長い場合で、4時間あまりの時間をかけ、時間に追われることなく、じっくり制作できるという設定です。
また、制作に入る前、「かいがクラス作品展」会場に集合し、作品の「講評会」を行いました。
まずはこちらの様子からご覧下さい。
◇◇◇「作品講評会」◇◇◇ (写真:亮馬先生 )
13:30〜14:00を予定していた講評会でしたが、時間をオーバーし、14:30頃までかかってしまいました。それでも皆さん、興味を持って、集中して耳を傾けてくれたので、大変嬉しく思いました。
そうした皆さんの熱心な眼差しを見ると、こちらも熱が入り、例えば、以前観た面白い映画のことを、誰かに伝えたくて話す時のように、夢中になって語ってしまいました。
絵のひとつひとつが生まれるまでの、作者の試行錯誤の物語、表現の面白さや、工夫などについてです。
どんな課題であったかを説明しながら、壁面毎に作品を紹介し、みなさんの意見を求めました。
「ある人は『お菓子を描きたい』、ある人は『宇宙の絵にしたい』と言ったので、お菓子の惑星が生まれました。これは何星でしょうか?」
「そこへ、NNちゃん率いるゴマちゃんの探査チームがやってきて・・・」
「地球を描きたいM君の気持ち、クジラ(イルカ)を描きたいK君の気持ちが融け合って・・・」
「この宇宙はどのように色を塗ったか分かるかな?・・・実は絵の具をこうして、こうして・・・」
「というように、ここに展示してある一枚一枚の絵について、まだまだ1時間でも2時間でもお話することが出来ますが、・・・」
「え〜、それは困る〜(笑)」
「そうですね(笑)このあたりで終わりにして、いよいよ制作へ移りましょう!」
たくさんの素敵な作品を描いてくれた、かいがクラスのみんなを讃える盛大な拍手で、講評会は幕を閉じました。
◇◇◇「かいが自由制作の会」◇◇◇ (写真:亮馬先生 )
講評会の後、ゆき組園舎に移動し、いよいよ自由制作のスタートです。
先ほど紹介した、この一年間の「かいがクラス」の課題・作品から、何らかのきっかけや、インスピレーションを得てもらえれば、というねらいがあったので、どんな要望にも対応できるよう、色々な道具や材料を準備して、待ちかまえていました。
しかし、このぽかぽかの陽気です。予想通り、殆どの参加者が、画板を手に表へ向かいました。
ある人は石段、ある人は園庭の遊具に寄り添うように、直感的に気に入った場所を定め、準備をはじめます。
「よし、描くぞ!」 「僕たちは森の奥に行くんだ。」
「スケッチブックを持ってきたよ。」 遊具に包まれて描く二人。いつもながらのひた向きな姿、Mちゃん。今日はいつもに増して、楽しいに違いありません。
「描けた!」完成作品が、次々と並べられていきます。
OM君は、色々な場所から見えるものを描いてくれましたね。勿論、ジャングルジムの天辺からもです。
Aちゃんは、こんもり青々と茂った木の葉をじっくりと観察し、描きあげていましたね。
木の葉の一枚一枚に、重みが感じられました。
OSちゃん、こちらも素敵な色使いです。冴え渡る空と、この日のポカポカが伝わってきます。
Iちゃん、まだまだ描きます。この日気がつけば、なんと10枚。躍動感溢れる実験絵画が多数!
お話をしながら、空想を次々と描いてくれた二人。見て下さい、Y君のおいしそうなオムライスとハンバーグ!!
S君と私も、絵の具を交互に塗りあって、色と滲みの実験をしていたら、プリンに、まぐろのお寿司に、エスカルゴ(!)が描けました!
Hちゃんは、音符でしょうか。青空の下、心に浮んできたのは、どんなメロディーかな^^
木も描いてくれました。
Koちゃんは、木々や、チューリップの花壇の絵を描いてくれました。
春らしい、やわらかな色彩の調和が印象的でした。
Nちゃんも、花壇前の石段に腰かけ、描いていました。以前、かいがクラスでも、水彩で同じ視点からの風景を描いたことのある彼女が教えてくれました。
「同じ絵だけれど、今は春になって、あのときと季節が違うからね、違う絵なの。」
絵には彼女の言う通り、季節の変化が表れていました。手前に見えていた「作品展はこちら」の貼り紙まで細かく描いてくれましたね^^
同じく石段で描き続けていたKaちゃんは、竹が生い茂った風景にじーっと見入っていました。
そして、描いた竹の幹と幹の間に、ユキノシタやヨモギの葉を次々と貼り付けていきました。
しぜんの色をかりて、竹林の青さを表したのでしょうか。発見の喜びがそのまま表れていて、観ているだけで楽しい気分になります。(右写真:MちゃんとKaちゃんのコラージュ)
おや?こちらも心に浮んできたものを描いているようです。山の上で、海の中を思い浮かべて描くというのも面白いですね!
Hちゃんは、園庭の一段下から木立を見上げた風景を、長い時間をかけ、丹念に描いていました。
それでも時間の足りなかった彼女、続きは家で。そうです!「心ゆくまで」^^
最初、木を描いていたので、目の前の風景を描いているのかと思っていましたが、完成した作品を見せてもらい、驚きました。地平線まで広がる草原。手前には、鮮やかな黄色い車輪の自転車にまたがる自分自身。どこまでも遠くへ漕いでいきたくなるような、爽やかな絵でした。
園庭の風景を描いてくれたH君。部屋に戻り、色紙を細かく刻んだり、パステルを削ったり、今度は色々と実験を試みているようです。そうです。これからも、思いついたことは、どんどん試してみて下さいね!
この日、部屋の中で描き続けていた人もいます。何を描いているか、お分かりでしょうか。
何とこれは、お魚の「カンパチ」です。UK君は、好きなものを描こうと心に決めて、見本となる写真と、大きな模造紙を持参していたのです。
丁寧に形をとり、絵の具や色鉛筆を駆使して描く彼の姿、その一筆一筆から、まっすぐな想いが伝わってきます。まるで、「描くとは、こういうことなのだ・・・!」と教えられているような気持ちになりました。
長時間にわたるカンパチとの格闘は、とうとう、日をまたぐこととなったのですが、後に完成したという便りを聞きました!
とうとう、釣り上げましたね(笑)勝利!!
森の中へ出かけた3人はどうなったかと言うと、2時間以上かけて絵を描き上げ、誇らしげに、明るい園庭へ帰ってきました。(彬先生と、太郎先生、育子先生が見守って下さいました)
SちゃんもT君も、鬱蒼とした森の木々の間にちりばめられた、キラキラと輝く木漏れ日の雰囲気を見事にあらわした、素敵な作品です。Sちゃんの絵には小鳥たちの姿もあります。その鳴声を聞き、実際には姿が見えなかった鳥も、想像して描いてくれたのです。森の息遣いがきこえて来るようです。
また、T君の木漏れ日の中には、ひときわ輝く部分がありました。画用紙に盛った白・薄黄色の絵の具から、無数に放射状の筋が伸びています。小枝を使ってひっかいたのだそうです。風に揺れる木の葉の間から、「ピカッ」と太陽が覗いて見える一瞬をとどめたかのような作品に、息を呑みました。
K君は、すらっと高くそびえ立つクスノキを選んで描きました。大胆に、画用紙を縦に3枚つなげた大作には、根元から枝の先までが描かれ、その先には青空がのぞいています。
・・・春学期、上終公園にて、彼が公園の中でもひときわ背の高い木を選び、根元から順に、見上げながら描いていた時のこと、とうとう絵が画用紙の上端にぶつかってしまい、
「あ、どうしよう、上の方までもう描けないよ・・・!」と声をあげて悩んでいた姿が、ふと思われます。(その時はその時で、彼が諦めず、最後には一枚の紙の中に、描きたかった木の全景を収めたことを付け加えておきます^^)
最後まで残っていた多くの参加者や、お迎えの保護者の方々で賑わう園庭は、すっかりと暗くなっていました。
頑張って描ききったお友達同士で、遊ぶ表情も、お迎えに来た保護者の方が待つ中、へとへとになるまで描ききった表情も、みんな、晴れ晴れとして見えました。
制作の時間をふりかえると、誰もが2時間以上、長い場合で4時間近く、取組んでいたことになります。また、一枚を描いた人もいれば、何枚も描いた人もいます。
言うまでもなく、それらは「密度」で測られるべきものであり、なおかつ、測り知れない意味や価値が含まれているに違いありません。
「どこで」「なにを」「どんなふうに」・・・。
心の数だけある、それぞれの自由を、各々が獲得してくれたのではないか。
今、この日のイベントを振り返りながら、そんなふうに感じることができます。
「今(子供時代)だから」という前置き無しに、心のままに、心ゆくまで何かに熱中する時間を、これからもずっと持ち続けて欲しいと願っています。
末筆となりましたが、イベントに参加下さいました皆様、ご協力下さいました保護者の皆様に、心から感謝申し上げます。有り難うございました!
また、監督を担当して下さいました高木彬先生、京都工芸繊維大学4回生の上田真理さん、岩切えつこさん、一日中、参加者の取組みを見守って下さいました、山下太郎先生、育子先生、「参加者として…」と言いつつ、監督、撮影までして下さいました福西亮馬先生、本当に有り難うございました!
こうして記録にまで残していただき、あらためて感謝申し上げます。ぜひ、四月からも、この日の感動を目指してよろしくお願いいたします。