10/22 かいがB 「しぜんのものを描く」

クラスが始まる前、彬先生がやってきて、興奮気味に伝えてくれました。
「ケンテツ先生、空に横断歩道ができていますよ!」
石段に駆け出ると、西の空に、太い筋状の雲が、嘘のように一列に並んでいます。
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一方、園庭からは、もこもこしたうろこ雲が、北から南へゆっくりと流れていくのが見えます。
秋の空も、いよいよ絵画を楽しんでいるようです。

今回のテーマは「しぜんのものを描く」です。
主なポイントは、「描くものを自分で探し、見つけること」そして、
「これまで見つけた描き方を、どのように生かせるかを考えること」です。

「自然の中にあるものを発見し、その命を分けてもらい、紙の上に新しく命を吹き込む。
そんな気持ちで描いてみる事を提案しました。

まず、描きたいものを探しに出かけます。
みなさん、どのようなものを見つけてくれるでしょうか。

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まっ先に、もみじの木に目がとまったM君。スルスルっと木の枝の中へ。Cちゃんも一緒に、枝葉を観察します。
Rちゃんも、もみじの木から、一枝を分けてもらいました。

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K君が、拾ったものを見せてくれました。手の中にはドングリの実がぎっしり。
さらに、ジャングルジムのてっぺんから空を見つめて、何かを考えているようです。

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JちゃんとIちゃんが、一緒になって「しぜん」を探します。袋に、何かを拾い集めているようです。

さて、描くものが決まったところで、いよいよ制作に入ります。
制作場所は、屋内、屋外を各自が選択します。

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M君は、最初に心に決めたもみじの小枝と迷わず向き合います。
このように、直感的な、取りかかりの早さというのも、時に大切なこと。彼のよいところです。
「あ、こうなってるのか・・・!」と、小枝のなりたちの中に何かを発見し、黙々と描いている姿が印象的でした。小枝を筆洗いに生けているのも、粋ですね。

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Rちゃんは、紅葉したてのもみじの葉を、大きく引き伸ばして描きます。
きっと、その形に惹かれたのでしょう。目を凝らさなければ分からないような、小さなギザギザがあることが、描くことによって、あらわになってゆきます。

Cちゃんは、教室にもどって来てから、
「やっぱり、何かを見て描くより、想像して描いてみたい。『芸術的』な感じで描いてみたい。」
と告げました。しかも「指で描きたい」と言います。勿論、テーマから外れていなければ、構わないので、Cちゃんの思う「芸術的」な感じで描いてみるよう、勧めました。
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「『自然』って、けわしい感じかなあ、やさしい感じかなあ・・・」と、つぶやきながら、想像を膨らませているようでした。

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Jちゃんも、指と筆を併用しています。指で描くことには、何か普遍的な楽しさがあるように感じられます。
集めた色々なものが、心のままに画面に配置され、彼女らしい、賑わいのある世界が広がってゆきます。

外の様子はどうなっているでしょうか。

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K君が選んだのは、前課題に続いて3度目となる、空。そして、このジャングルジム。
どちらにも、深い想い入れがあるようです。
そして、「私も!」と駆けてきたIちゃんと、肩を並べて描くこととなったようです。

互いに黙々と画面に向かいながらも、個々が、あたたかな「連帯感」のようなもので繋がっている。
そこに、独りではなく、「クラス」で取組む良さがあると、この場を見守っていた彬先生が、これまでのクラスを振り返りながら、「山びこ通信」の中に記してくれました。

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Iちゃんは、大きな笹の葉や、イチョウの葉と一緒に、夕日を描きました。彼女にとっても、空がお気に入りの画題となり、同時に自信を得たようです。こちらも嬉しくなります。

Kくんが空を描き終えた頃、時計の針は5時に迫っていました。後片付けの時間がくるまで、残り10分少々。それでも、クヌギの実と木の葉の絵も描きたかった彼は、少し急ぎ足で、新しい画面と向き合うことを決めました。

そうして、しばらくした時です。ふと、空をみやると、先ほどまでの空とはまた違った光景が、そこには広がっていました。空全体が波打つように、蛍光オレンジとも、桃色ともつかない色に、まぶしく光っています。それは、夕日が地平線の向こう側へ消えた後、短い時間だけ見ることのできる、この世のものとは思えない夕焼けの色でした。
「あ〜っ、いま、いま!」
落ち着かない様子で、K君が叫びます。
「きえるな、きえちゃだめだ・・・!」

感動と、描きたい衝動。葛藤。それらが同時に押し寄せ、暫し立ちすくんでいた彼の姿が忘れられません。
残念ながら、この瞬間の空に取り組むことは叶いませんでしたが、空はいつでもK君のことを、待ってくれているはずです。

このようにして、皆さんが、思い思いの「しぜん」を見出し、描いてくれました。
それらの作品は、今年度の終わり頃、改めてアップロードし、お目にかけたいと思います。
(現在、3月の中旬を目処に、「山の学校 かいがクラス展」を企画中です。)