今号の山びこ通信(2013/11/1)から、クラスの様子をご紹介します。(以下転載)
『漢文入門』(担当:木村亮太)
漢文入門クラスの秋学期は『韓非子』和氏篇から再開しました。そのあと、いったん『史記』廉頗藺相如列伝を「刎頚の交わり」まで読んで、いまはまた『韓非子』姦劫弑臣篇に戻ってきました。
今学期はベテラン・Iさんと私の1対1です。授業は、まずIさんが一段落ほどに区切った文章を訓読し、つづいて解釈を交えながらの現代日本語訳(ポイントごとに私がチャチャを入れます)、ここで選手交替、今度は私が訓読をしながら、一句ごとの意味を確認していき、最後に残った疑問点の検討、ということの繰り返しで進んでいきます。思えば、2年前に初めてIさんとお会いしたときから、ずっと同じことの繰り返しです。ですが、その間にIさんがどんどん成長していたように、私の役割も変わってきていたように思います。
当初は、Iさんや他の受講生の方がうまく読めなかったところ、うまく意味が取れなかったところを、(ちょっと嫌な言い方ですが)「直す」というのが私の主な役割だったような気がします。ところが、最近はその必要がほとんどなくなってきてしまいました。Iさんがスラスラと読んでしまうからです。なにか引っ掛かりがないとアッという間に授業が進んでしまって、それではIさんにとっても歯ごたえがないでしょう。
いつの頃からか、私は「Iさんが絶対に知らないこと」を言おうと努めていたように思います。ひとりで予習しながら、「さすがに思いつかないだろう」ということばかり考えるのです。マニアックな内容になることもありました。それで授業に行きます。Iさんの反応はどうでしょう。こんな話、喜んでくれたでしょうか。まるで、こっちが生徒のようです。
表面をなぞるだけだった漢文入門クラスのテキストに、いつの間にか、ところどころ穴を掘ったあとができるようになりました。ことしもあと2ヶ月、最後まで頑張りましょう!
(木村亮太)