かず6年(0918)

福西です。この日は、ひさびさに「論理パズル」をしました。

 

『槍投げ競技』

ギリシアの英雄たちが槍投げをして順位を競いました。アイアスとオデュッセウスは1位~3位のいずれかで、同点ではありません。さて次の発言から、二人は何位だったと分かるでしょうか? ただし、(実際の順位で)自分より上位の者についての発言は虚偽で、それ以外の場合ならば真実です。

アイアス: オデュッセウスは2位だった。
オデュッセウス: アイアスは2位ではなかった。

分かった人は、同点ありの場合も考えて見ましょう。

Yu君の解答(()は私の補足で、それ以外は原文のままです)

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まず、結論から言うと、答えは、2通りあります。これからアイアスを「ア」、オデュッセウスを「オ」と表します。

まず、パターンは6通りあるので一つずつ確かめます。1つ目の「ア」が1位で「オ」が2位の場合は、上位の人(この場合アイアス)は真実を言うので「オ」は(アイアスの発言より)2位になって「ア」は1位になるので成立します。

次に、2つ目は、「ア」が1位で「オ」が3位の場合を考えて、「ア」が真実を言うので、「オ」は2位になるけど3位の場合を考えているので、成立しません。

次に、「ア」が2位で「オ」が3位の場合を考えて、「ア」が正直なので、「オ」は2位になるけど「ア」が2位だから成立しません。

そして、「オ」が1位で「ア」が2位のときは「オ」が正直なので、「ア」は2位以外になります。すると「ア」が2位でなくなるのでこれは、成立しません。

次に、「オ」が1位で「ア」が3位の場合を考えると、「オ」が正直になるので「ア」が2位以外になって「ア」は3位なので成立します。

最後に、「オ」が2位で「ア」が3位の場合を考えると、「オ」が正直になるので「ア」が1か3位になって「ア」はうそつきということを考えると、「オ」は2位ではなくなるので成立しません。

だから、答えは「ア」が1位で「オ」が2位の場合と「オ」が1位で「ア」が3位の場合で2通りです。

【コメント】

「証明は、丁寧に書けば書くほど価値(=普遍性)が増します。この問題の答を書くことは、おそらく一生に一度しかすることはないだろうと思うので、そのつもりで仕上げてみてください」という、私の(大仰な)言葉がけに、Yu君は素直な反応を示してくれて、いつも以上に時間をかけて書いてくれました。その甲斐あって、すっきりとした見やすい証明になっています。6つの場合分けを省略せずに書いたことで、筋もよく通っています。言うこと無しの答案です。

 

Ka君の解答

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アイアス=「ア」、オデュッセウス=「オ」とする。

まず、結論から言うと「ア」と「オ」の言っている事が矛じゅんしないのは、図1である。

考え方は、消きょ法である。まず全てのパターンを考えてみた。図2

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(→○が矛盾なし、→×が矛盾の流れを表しています。ここでの矛盾とは、正直のはずの者がウソをつく場合と、ウソつきのはずの者が真実を述べている場合です)

まず「ア」1(位)、「オ」2(位)の場合図3のようになって矛じゅんはない。

次に「ア」1「オ」3の場合図4のようにむじゅんする。同じく「ア」3「オ」1以外むじゅんする。

だからA(Answer)は図1である。

同点の場合も考える。

同点の場合でも文章をよく読めば同点の場合どちらも真実とすると書いてある。それをりようするとむじゅんする。理由は、図SP1

【コメント】

Ka君は、図を使って簡潔に示してくれた分、時間が余ったので、同点のケースも考えてくれました。一つの設問を終えてやれやれと思っているところに、「ではこの場合は?」と言われると、たいていはもっと難しい問題が待ち受けていると思って、及び腰になりそうなものです。ですがKa君は「よし」と前向きになってくれていました。そのおかげで、一つの事実を見抜くことができ、「なーんや、難しいことなんかなかったやん」と思えたようでした。その自信の程は、Ka君の答案にある「文章をよく読めば」という言葉にも表れています。

うそをつくケースは、下位が上位に対する場合のみです。よって同点の場合は上位下位が生じないので、そもそもうそつきがいないことになります。とすると、アイアスとオデュッセウスの発言は真実にならざるを得ません。けれども二人の発言はどちらも「2位」についてのものです。そして一人が2位だと言い、もう一人が2位ではないと言っています。けれども二人とも「同じ順位」です。これはありえるでしょうか。そうです、ありえないのです。ということで、同点の場合を含めても答は変わらない、というのが結論です。このように、ベールに隠された事柄を明らかにして、それを当たり前の事実にするという、とても大事なことをしてくれたことになります。

 

また二人とも、書きはじめに、『アイアスを「ア」、オデュッセウスを「オ」とする』と、定義を置けていることがよいです。今は単に、繰り返し使うことが予想される用語の「省略」という意味があるぐらいですが、これがあとあと、「直線をl、円の中心をOとする」とか、「y=f(x)とする」といった、数字やアルファベットといった「記号」に置きかえることとも関連してきます。

たとえば「2個のケーキと1個のケーキ、合わせていくつでしょう?」という問題では、実物のケーキがひとまず絵にかわり、さらにそれが「2」や「1」というただの数字に置きかわっていきます。「ケーキ=2」「ケーキ=1」という置きかえは、よくよく考えれば、とても抽象的な操作をしていることになります。だからこそ、それはいよいよ数学的です。「AをBとする」と自分ではじまりに置く(定義する)ことは、一見文章のことみたいですが、A=B(厳密には:=)と式で書けることを思えば、やはり数学っぽいですよね。

「~を・・・とする」と置くことは当たり前のことみたいですが、その当たり前が「当たり前」になって使いこなせることが、これから数学を学んでいく上では、とても大事になってくるので、ここで得意になってくれると嬉しいです。

 

残りの時間は、先週に出しておいた問題の続きを考えてもらいました。「たてに4つ、横に4つの等間隔に並んだ計16個の点を、6本の直線で一筆書きですべて通るようにせよ」という問題です。(直線は折れ曲がったところで「1、2・・・」と数えることとします)。それについても書きたかったのですが、長くなったので割愛します。