福西です。
今学期は、分数と小数をテーマにしています。
面積2の正方形の一辺、また体積2の立方体の一辺ときて、今度はいよいよ円周率です。
(今回は分数の計算に必要だったので、関数電卓を使いました)
#分数の復習がてらに、途中までは手計算で頑張りました^^
5年生で習う、円周率の意味は、「円の周りの長さ」/「直径」という分数で表されます。分数とは、比で表せる数のことです。そしてその比をπ(パイ)という一つの数(文字)で表すことは、「どんな大きさの円でも一定である」ということを表しています。
直径=分母が大きく(小さく)なれば、それに応じて円周=分子も大きく(小さく)なります。その割合が「一定である」ということを発見した当時の人々の驚きは、いかばかりだったでしょうか。きっと「これは大事だぞ」と考えたことでしょう。
しかし、π=3.141592・・・という数自体は、実は、分数ではなく、無限に不規則な数字の並びが続く小数となります(ここは言葉のトリックに聞こえるかもしれませんので、補注をご覧ください)。あるいは長さ1の直径に対する円周の長さは、3.141592・・・となり、決して分数(や循環小数)では表せません。
今回は、その円周率にまつわる、ちょっと不思議な計算を紹介しました。
+1/1
-1/3
+1/5
-1/7
+1/9
-1/11
+1/13
・・・
これの結果を最後に4倍します。
その時、この数が最終的に「円周率」にたどり着く、と言ったら、驚かれるでしょうか。あるいは「そんなことあるはずがない」と思われるでしょうか?
つまり、何を言っているかというと、円周率は、それ自体は「分数で表せない数」でありながら、分数同士の間に「無限個足す」という操作を許せば、「無限個の分数で現すことができる」ということです。本当でしょうか?
というわけで、本当にそうなるかどうか、いざ実験してみました。
1の4倍は4。これがスタート地点です。次に、
1-1/3を計算します。これは2/3です。
そしてそれの4倍で、8/3。
これを小数に直すと、
2.6666・・・
です。
さっきよりも減りましたね。(1/3を引いたので、当然ですね)
さらに、
1-1/3+1/5は、どうでしょうか。
13/15。それの4倍で、
52/15
=3.4666・・・
です。
こうやって、どんどん計算していったところ、次のようになりました。
1まで 4
+1/5まで 3+7/15=3.4666・・・
+1/9まで 3+107/315=3.3396・・・
+1/13まで 3.2837・・・
+1/17まで 3.2523・・・ (上の数との差は、約-0.03)
+1/21まで 3.2323・・・ (-0.02)
+1/25まで 3.2184・・・ (-0.014)
+1/29まで 3.2081・・・ (-0.01)
+1/33まで 3.2003・・・ (-0.008)
+1/37まで 3.1941・・・ (-0.006)
となり、徐々に「ある値」に近づいていることがわかります。
一方、最終項に-の項を加えた時の値を並べてみます。
-1/3まで 2+2/3=2.666・・・
-1/7まで 2+94/105=2.8952・・・
-1/11まで 3+3382/3465=2.9760・・・
-1/15まで 3.0170・・・
-1/19まで 3.0418・・・ (上の数との差は約+0.023)
-1/23まで 3.0584・・・ (+0.017)
-1/27まで 3.0702・・・ (+0.012)
-1/31まで 3.0791・・・ (+0.009)
-1/35まで 3.0860・・・ (+0.007)
-1/39まで 3.0916・・・ (+0.005)
どちらも、加える数がどんどん小さくなっていくので、その変動が小さくなっていき、ある値に近づいていっていることがわかります。
今日はここまで確かめて時間となりました。
そこで、最後の結果の3.0916・・・と3.1941・・・の平均を単純に取ってみると、
(3.0916・・・+3.1941・・・)÷2=3.1428・・・
となります。
なんだか、期待が持てそうな数の並びではありませんか!?
ただ、もうすでにお気づきの方もいるかと思いますが、残念なことに、今回取り上げた例は、ある値へと近づく(収束する)のが「とても遅い!」です。(苦笑)
なので、このあともまだまだ計算は続くことになります(泣)。
それは、ちょっとどころか、かなり大変な作業で、実はこっそりあとで私もエクセルで計算してみたのですが、
-1/1251+1/1253まで加えて、やっと(マイナスからもプラスからも)3.14になります。(これでやっと、小数第2位までが円周率と一致)
次に小数第3位を一致させようとすると、またさらに項を大量に追加する必要があって、
+1/4905までで、3.1411851556442、
-1/4907までで、3.1419993229507
と、両側からやっと3.141まで一致することが見て取れます。
これは大変!
結局、項を追加すればするほど、3.14→3.141→3.1415→3.141592・・・と、先週やった「2の3乗根」の時のように、次々と精度がよくなることを期待したのですが、円周率ではそうは簡単にはいかないということが分かったのでした。ううむ、円周率・・・手ごわいです。
(補足)
これはグレゴリーの公式といって、大学で「マクローリン展開」というものを習ったついでに出てきます。(マクローリン展開というのは、ある一つの関数f(x)を、x、x^2、x^3、・・・x^n・・・という無限個のべき関数の成分に、適切な係数の重みを付けて重ね合せることで表現できるというアイデアです)。
(補注)
以下の説明は、中学以降で習うので、今の6年生たちは聞き流してもらってよいです。(授業では以前、これを帰納的に確かめました)。
有理数(rational number)とは、有比数というのが直訳で、a/bなどの、「比」、つまり分数で表せる数のことです。それを小数に直す(割り算を実行する)と、有限のけたで割り切れるか、循環小数になります。
循環小数というのは、たとえば1/7=1÷7=0.142857142857・・・と、「142857」という有限の数の並び(循環節)が繰り返し現れるものことをいいます。1/3=0.333・・・も循環小数の一つです。分数はすべて循環小数に直ります。逆に循環小数は、すべて分数(有理数)に直ります。
そして、この循環が無限に不規則に続く小数、つまり分数(有理数)に表せない数のことを、無理数といいます。