0608 英語講読(J.S.ミル『自由論』)

導入を終えて本格的な議論に入る2章の冒頭からです。

 

2章では思想と議論の自由が取り扱われます。政府が人民の意に反して思想や議論の自由を抑圧するのが悪いのはもちろんとして、人民の意を受けた政府でさえも思想や議論の自由を抑圧すべきでないと力強く表明する部分が印象的でした。

 

But I deny the right of the people to exercise such coercion, either by themselves or by their government. The power itself is illegitimate. The best government has no more title to it than the worst. It is as noxious, or more noxious, when exerted in accordance with public opinion, than when in or opposition to it.

 

しかもその抑圧する意見がたった一人のものであっても、さらにはそれが誤った意見であっても、いやだからこそ、擁護する必要があると述べる部分も圧巻です。結論を先取りすると、ミルは自由に議論を戦わせえるというプロセスを重視し、それを経て残ってきたものに一定の信頼を付与するという主張です。その前提にあるのは人が誤りを犯すということと、人はその誤りを正すことができるということです。

 

それゆえミルの想定する思想と議論の自由は絶対的なものです。誤った考えが広がらないように、政府がまず妥当だとされる考えを広め、誤った考えを広めるのを禁止するのがよいとする、修正自由主義(ここで勝手に私が命名しました)といった反対論は、ミルと議論の前提をかなり共有しつつも、ある種まったく別物であると言えます。

 

内容も構文も密なので理解に苦労するところもありますが、読めば読むほど理解できてきます。