浅野です。
今学期は英検の準1級をテーマに掲げてきて、受けた後の手応えでは厳しそうとのことでしたが、返却された結果を見せてもらうとあと8点ほど足りないだけでした。また、大学ではたびたびTOEICの練習をするようで、その結果も回を追うごとによくなっていると報告してくれました。国語力があり、英語構文の理解もできているので、あとは語彙力だという当初の見立ては間違っていなかったようです。
Living in an information-oriented society, people tend to make more of what they communicate to others than how they do so.
まず冒頭はいわゆる分詞構文ですね。分詞構文は基本的に主節の主語と適当な接続詞を補ってやればよいので、この場合は”When people live in an information-oriented society, …”と理解すればよいです。後半の主節は”make”の働きが気になります。”make+O+C”で「OをCにする」という文型なのかと思いきや、OとCが並んでいる形跡はありません。これは”make much of ~”で「~を重視する」という熟語的表現の”much”が比較級になったものです。では何と何を比べているのかというと、「人々が他人に何を伝達するか」を「彼らがどのようにしてそうするか」、つまり「人々がどのようにして他人に何らかのことを伝達するか」よりも重視するということです。全体を和訳するなら、「情報志向社会で生活していると、人々は他の人たちとどのように意思疎通するかということよりも、何を伝達するかということを重視する傾向にある。」くらいです。
この箇所は英語が理解できても内容が難しいです。伝統的な社会だと人々は何かを伝えるためというよりもその場を和ますために会話をします。「いい天気ですね。」というような会話が典型的で、同じ場所にいるならいい天気なのは相手も当然わかっているはずですから、この発言の情報的な価値はゼロに等しいです。一方、現代のような情報志向社会で多くの情報を処理しないといけないような忙しい人と話すときは、時候のあいさつなどはいいから用件のみを端的に伝えてくれと言われることがあります。これはまさに伝達する内容が大事だということです。何か質問したいことがあるという状況を想像しても、普通はいきなり用件に入りません。しかしインターネットで検索するときはあいさつなどはせずにいきなり調べたい言葉を直接入力します。
本文では上記の文の後に、そのため現代では敬語やその背景にある謙虚さが廃れつつある、と続いていました。その賛否はともかく、英語構文や背景知識をを生かして総合的、実践的に書かれている内容を読み取るのは楽しいことであります。今回で春学期は最後ですが、「楽しかったです」という感想が聞けてうれしかったです。夏休みには語彙を増やすことを頭の片隅に置きつつ、楽しみながらいろいろな英文を読んでもらえたらなと思います。
>語彙力
いくらあってもよいものです。これは日本語もそうです。語彙というと、それを「いかに」覚えるかより、「何を」覚えたらいいのか?言ってくれ、という顔をされることが多いです。私が学生時代は、赤尾の豆単のようにアルファベット順の語彙集は役に立たない、ということで、試験によく出る英単語集が出始めました。今もその流れをくんでいるのでしょう。
山びこ通信で浅野先生が書かれたように、語源を切り口にするのは有効だと思います。アメリカ人がアメリカ人向けに書いた本の中にも、そのようなテーマの単語増強法を説いたものがいっぱい見つかります。
そうなると手前味噌ですが、ギリシア語、ラテン語の知識は不可欠になります。ちょうど日本語を読むとき、漢字は大事ですが、同じように、ギリシア語、ラテン語経由の英単語(というより綴りも含めほとんど古典語)は重要です。新聞はひらがなより漢字を目で追います。同様に、英語の速読をする際にも、古典語から派生した英単語を知っていると、読む速度が増します。
>私が学生時代は、赤尾の豆単のようにアルファベット順の語彙集は役に立たない、ということで、試験によく出る英単語集が出始めました。今もその流れをくんでいるのでしょう。
そうですね。『英単語ターゲット』や『システム英単語』はその流れで、最近ではコンピュータ分析を売りにしたりしています。また、『速読英単語』のように、文章中で単語を覚えるものが1990年代以降登場しました。最近では『つむぐ英単語』のように語源に注目するものも増えつつあります。
>そうなると手前味噌ですが、ギリシア語、ラテン語の知識は不可欠になります。
これまで辞書や語源本を頼りにしてきたのですが、限界を感じ始めてきたので、ギリシア語やラテン語の知識がほしいです。空き時間が出来次第、山の学校で学ぼせてもらおうかなと思っています。
小林先生も無事に教科書を終えられたようですので、先生もぜひぜひ(^^)