昨年九月からギリシア語講読を受講して、ホメーロスを読んでゐます。広川先生には以前大学でギリシア語入門を教はつたことがあつて、その時の明快な講義には感心しました。この授業でも、一語一語のニュアンスを丁寧に説明して頂いてをります。ギリシア語は「小辞」といふのが難物ですが、これが分つてくるともつと面白くなると思つて努力してゐます。又朗読の仕方は本を読んでも中々分らないのでこの授業に参加したといふこともあつて、特に注力してをりますが、歳をとつて頭が固くなつてゐる所為か、中々進歩しません。
ところで私が六十才を過ぎてから古典ギリシア語を学び始めたのは、何よりも古代ギリシアが好きだからです。古代ギリシア文化の魅力は、一部門に偏らないその総合性・統一性にあります。彼らの遺したものは、政治制度としての民主政や「自由」の意識から始つて、神話・美術(彫刻・建築・陶器)悲劇・喜劇・叙事詩・抒情詩・歴史・哲学・論理学・弁論・政治学・数学・天文学・動植物学・医学等々、極めて多方面に亘り、しかも世界的水準からみても、いづれも独創的で超一流であることです。このことから、ギリシア文化は「モデル」「範例」としての意義をもち、これと比較することで現代なり日本なりが一層よく分る、といふことがあります。
ギリシア文化は決して骨董品ではありません。現代でもなほ生きてゐて、切れば血が出るやうな現代性をもつてゐます。ギリシア・ラテンの西洋古典は、我々日本人の教育・教養には殆ど採入れられてをりませんが、これは非常に惜しいといふか、むしろ欠陥だと思ひます。ギリシア語はそれだけ時間をかけて学ぶに十分価するものです。
是非ギリシア語を、そしてギリシア文化を一緒に学ばうではありませんか。
(2010 年2 月I.R.さん)