山下 太郎

中学三年生の秋と言えば、誰もが入試のことで焦り出す頃ではないかと思います。英語の場合、入試で問われる内容はどう見ても基礎的な事柄が中心です。ですから集中すれば今からでも十分間に合います。英語に限らず語学の勉強では何より基礎を大事にしてください。

基礎を大切にするとは、教科書に書いてある英文を一字一句正確に覚えるということです。ちょうどかけ算の九九を暗記したように、英語を学ぶ上で暗記は避けて通れません。逆に言えば、それができない度合いに応じて入試問題で失点を重ねることになります。

このような考えから、中学3年生のクラスでは秋学期に既習事項の復習を徹底的に行いました。春学期に中1、中2の復習を完了したことが効いていて、残すところは関係代名詞のみとなりました。ここを攻略したら、あとは入試まで長文読解を繰り返すのみです。もちろん、すでにボロボロにした中1 から中3 までの問題集は、最初から最後まであと何回も繰り返して復習する予定です。

進学塾や私立中学ですと、中2 の段階で中3 の範囲を終えることもありますが、その分定着しない知識が増えるおそれがあります。それを避けるには、いっそう丁寧に基礎を復習する心がけが大切です。既習範囲は、目をつぶっても教科書の内容が音としてよみがえる、または、白い紙の上に教科書通りの内容を再現できる、または、問題集を解く上で、問題の答えが瞬時に浮かぶまで繰り返す、等。

私のクラスの場合、最近は目先を変える意味で英検3級(中3 までのレベル)の問題(一次試験)を解いてもらっています。誰であれ、最初に問題に手をつけたときには凡ミスを犯すものですが、説明をしてもう一度はじめからチャレンジしてもらうと、電光石火の早業で全問正解できるものです。当然といえば当然のようですが、この「100パーセント正解する」という爽快な気分を味わうことで、生徒は焦らずに基本的なトレーニングを重ねる大切さを学び、自信を深めていきます。

日本語では「急がば回れ」、英語ではSlow and steady wins the race. と言います。受験勉強を通じて、「急がば回れ」の真意を生徒が実感してくれたらと心から願っています。(2005.11)