『漢文講読Ⅰ』『漢文入門』『東洋古典を読む』を受講して

 山の学校は友人の紹介で、まずは息子が通い始めました。それを見ていて楽しそうだなと思うと同時に、大人向けのクラスがたくさんあることに驚いて、いつか自分も何か学んでみたいと思っていました。
 息子が大きくなって少し時間ができそうだと思った頃に、山の学校からの案内で「漢文講読I」という志怪小説を読むクラスが始まると知り、興味を持ちました。たまたま岡本綺堂の『中国怪奇小説集』を読んだことがあり、いつか原文で読んでみたいと思っていたからです。
 せっかく大人になって自分で選んで勉強できる機会なので、先生や授業の雰囲気を知りたいと思い、まずはガイダンスを拝見して…と実に慎重に受講を決めたのですが、まったく心配する必要がなかったほど、漢文の斎藤先生は優しく、朗らかな方でした。

 漢文を読むレベルが様々に異なる受講生を前に、先生は一人一人に興味のあることを聞いた上でテキストを選び、それぞれに見合った速度で授業を進めてくださるので、私も少しずつ漢文の読み方が身についてきたと思います。
 とはいえ、受講を始めた頃は漢字辞典(新字源)のひきかたもわからず、訓読も訳もよくできず、ご一緒した方々には申し訳ないくらいでした。ですから予習しようとテキストを前にしても「どうしよう…」と思うばかりだったのですが、知らない漢字や気になることを少しずつ調べるうちに、暗号のような漢字の羅列が意味を持って、だんだんひとつの物語になってゆくことが楽しくなってきました。それを授業で「合ってるかな?」と確認しながら、先生や他の受講生の方々とのやりとりを通して新しいことを学んでゆく臨場感は、オンライン授業というイメージを良い意味で裏切るものでした。また、自分では選ばないだろうと思うテキストも、先生が吟味して選んでくださっているので、読んでみると面白く、それぞれが印象に残っています。
 「漢文講読I」では、期待以上にたくさん、あらゆるジャンルの志怪小説を原文で読むことができました。また、漢文に直接触れる機会を持ったことで、日本語や日本文学への影響の深さをあらためて実感し、そのことは私にとって大きな発見となりました。

 私の場合、予習の時間などを考えると複数の授業に参加することはできないので、「文法をきちんと勉強したいな」と思った学期は「漢文入門」を受講し、今期は「東洋古典を読む」に参加しています。どのクラスに参加しても先生が変わらないのは安心感がありますし、先生がその時受講している一人一人の個性を考慮して授業を進めてくださるので、すべてが興味深く、新鮮です。例えば、私自身は「漢文講読Ⅰ」で読むような志怪小説が好きだと思っていましたが、今期の「東洋古典を読む」のクラスで『燕丹子』というテキストを読み、登場人物の生き生きとした姿に惹かれて、その元となる『史記』を読んでみたいな、と思う気持ちも生まれました。実際『史記』を読まれている「漢文講読Ⅱ」というクラスもすでにあり、今の山の学校は、漢文に興味があれば、なんでも揃っていると言っても過言ではないと思います。
 気になるクラスのある方には、ぜひ一度体験されることをおすすめいたします。

  最後に、「漢文講読Ⅰ」で読む「志怪小説」についての私見ですが、日本の「怪談」のイメージとはまったく違う、思いがけない展開の小話が多く、ツッコミどころも満載で、読んでいると笑ってしまうくらい面白いので、たくさんの方々におすすめしたいです。
 事実、授業で扱っていただいたお話を家族に話すとよく盛り上がりました。特に息子には興味深かったようで、日本語に訳されているものを読み漁り、いつの間にか私などより中国の古典に詳しくなっていました。そんな頃、息子の通っている学校がコロナで学校閉鎖になり、斎藤先生と山の学校が快諾してくださったお陰で、一緒に「漢文講読I」を受講したことがあります。息子はその時とても楽しかったのと、先生がたくさん褒めてくださったことが自信になったのか、今、学校で少し漢文が始まったそうですが、とても良く読めているとのことです。息子の山の学校との出会いから始まった私の漢文講読ですが、彼にとってもまた、漢文と出会う機会となり、感謝しています。

(受講生T.A.さん)