しぜんA 2013.12.17

梁川です。

春学期以降、毎回の更新が叶わず、申し訳ございません。
間があいてしまいましいたので、秋学期をふりかえりながら、冬学期はじめの様子をお伝え致します。
(秋学期の詳しい様子は、山びこ通信秋学期号p.3をご覧下さい。)

A(火曜)クラスでは、9月以降、ロープワークを中心とした、森の中での活動が中心となりました。
森の奥から斜面を下って沢まで行った日もあります。沢で見つけて教室へ連れ帰った沢蟹は、みんなで相談して飼育してみよう、ということになり、順番に持ち帰って世話をしていました。

まずは、飼育経験者のR君。「ごはんつぶが好きで、よく食べてくれたこと」や、「体長が5.5センチくらい」であったことを「しぜん日記」で伝えてくれました。
つぎにK君が世話をして、教室に連れてきたときは、「あまり餌を食べなくなったこと」「冬眠に向かっているのではないか」ということを発表してくれました。
そこで改めて、今後どうするか、みんなに問うと、「もう逃がしてあげよう」となりました。

本来なら、みんなで一緒に沢へかえしに行きたかったですが、冬休みをまたぐこともあり、代わりに私がそれを行いました。そっと水の流れの中に置くと、あまり動かなかった沢蟹も、元気そうにのそのそと川底を歩き回って見せてくれました。ここにご報告致します。

上記のような、生徒からの「発表」は毎回、何かしらあります。
特に低学年の中には、何枚も「しぜん日記」を書いてきてくれる生徒もいて、ひたすら感心するばかりの内容です。クラスにとってよき刺激となっています。
また、りっぱな蛇の抜け殻を持ってきたり、家でとったアサガオの種を持ってきたりするケースもあります。
(それらの詳細は、また別の機会にご紹介したいと思います。)

こうした発表の時間が終わると、みんなで「ひみつの森」へ向かいます。
ひんやり、しっとりした森の空気に包まれて、陽がとっぷり暮れるまで、とことん遊ぶ。
ときにロープの助けも得ながら、木の枝につかまったり、木に登ったり。
木々の間に渡したロープの上を、綱渡りしたり。
木にくくったロープで大縄飛びをしたり・・・。
これが今の火曜日クラスのスタイルです。
からだ全体を使った遊び(=森との対話)を通して、仲間たちの連帯感も深まっていくのを感じます。

さて、12月3日のこと。
クラス終了時刻が近づき、辺りが次第に暗くなっていく中、各自ランタン(電池式)を手にしながら、軍手やのこぎり、ロープを片付けていると、
「ねえ、先生、こわい話してよ!」とT君。
するとランタンを囲むように、しぜんとみんなが集まってきて輪になりました。
残り時間も少なく、このときは気の利いたお話ができませんでしたから、
「それでは、また次回にね。」と約束しました。

そして、2週間経った、次のクラスのこと。
いつものように森の中、みんなヘトヘトになるくらいまで、駆け回ったり、木登りしたりして、遊びを満喫したあと、ランタンを灯し、少し早めに声をかけました。
「じゃあ、ちょっとお話をしましょうか・・・。」
果たしてランタンを囲むように、きゅっと、みんなが輪になる姿を、心のうちで、微笑ましく思いました。
こわい話、とは言っても「怪談話」のようなものをするつもりはありませんでしたので、ある昔話を、素話しで語ってみました。
話の筋は、「ある貧しい若者が、森の中で鬼のしかけた「鳥もち」のような罠につかまってしまい、鬼の岩屋へ連れて行かれるが、智恵を絞ってなんとか逃げ延び、そのとき持ち帰った鬼の宝によって、たちまち長者になる」といったものです。
(「その噂を聞いたもう一人の貧乏な若者が・・・」と話は続きますが、時間の都合で割愛しました。昭和5年頃の童話集の中から拾いました。)

闇を背にしながら、しーんと話に耳を傾けること、10分あまり。
話が終ると、
「な〜んや、普通の昔話やん!」と笑う子もいれば、
「ねえ先生、もう、絶対怖い話せんといてな・・・」と懇願する子も。
これは、意外なことでした。

臨場感をねらって、森の中が舞台のお話を選んだのは確かですが、こちらの空想をはるかに上回る、色鮮やかな空想が、子どもたちの中に生まれたのだと実感し、「ごめんね^^;」と詫びながら、内心では、喜ばしくも思うのでした。

ランタンを手に、いつもより、きゅっ、とひっつきながら森を抜けて園庭まで戻ってくると、眼下に広がる夜景がまばゆいばかりに輝いています。
「きれ〜い!」「あ、京都タワーや!」
などと叫びながらジャングルジムに駆け登って眺めます。

そのうち何人かが、「ヤーッ ホー!」を始めました。
真っ黒な吉田山のあたりから、かすかな「ヤーッ ホー」が返ってきます。

時間も遅いので、何回かで制止し、この日のクラスを終了しました。
今度のクラスでは、早い時間に、思い切り「ヤッホー!」の出来る場所へみんなで行きたいと思います。