漢文クラス(2012/1/30)

今回も「洛神賦」のつづきを読み、ようやく最後まで読み終えました。

長らく読んできた「洛神賦」も、ようやく最後の1回になりました。
もともと一緒になることの叶わない、人間である曹植と、神仙である洛神との永遠の別れのシーンです。

神女は別れ際に江南産の宝石を曹植に贈ると、ふとした途端に消えてしまいます。
残された曹植は、神女の姿を求めて探し回りましたが、けっきょく見つからず、後ろ髪を引かれる思いで、再び帰路へと就いたのでした。

このとき、神女が呼び出した不思議な乗り物の描写がとてもおもしろかったので、すこしご紹介します。
それは「水の上を行く車」で、きれいな魚が露払いを務め、美しい声で鳴く鳥が先導し、ゆったりと揺れながら進む車を牽くのは横一列に並んだ六匹の龍、車輪の両脇には鯨が付き添い、水鳥たちが周りを囲んでいる、というものです。

その様子を描いた図(東晋・顧愷之(こがいし)「洛神賦図」(宋模本))があったので、これも合わせて見てみることにしました。
六匹の龍はきれいに整列し、まるで入場行進のときのようです。
「鯨」には魚のような大きなヒレがついていて、私たちが知っている姿とは違いましたが、これも大昔の人が想像して描いたと思うと、かえって微笑ましいものです。

また、図を見ながら読んでみると、文章だけでは想像しなかったような発見にもありました。
消えた神女を探す曹植は、「軽舟」に乗って川のあちらこちらを漕いで回ったというシーンがあるのですが、文章だけを読んだときは、てっきり小さなボートを想像していました。
ところが、顧愷之の図では、この「軽舟」は大きな二階建ての船として描かれています。
日本の川に比べると大陸の川はとても大きいですし、曹植も一国の王ですから、それは小さな手漕ぎのボートには乗らないのかも知れません。
そんな風に納得しつつも、ここまで馬車でやってきたのに、どうしてこんな大きな船が用意できたんだろう、と気になってしまいました。

木村